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『血』※暗
ザクっ
「痛ってぇ!」
ルフィが珍しく夕飯の手伝いをすると張り切って。
オレの隣で野菜を切っていたら
勢い余って自分の指までざっくりイッた。
ぽたぽた、血が垂れる。
(あぁ、もったいない)
気付いたら血だらけの細い指は、オレの口の中。
鉄の、生暖かい味が咥内に広がる。
噎せ返るような、血の匂い。
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本当に繋がっていたら、よかったのに。
何度、願ったただろう。
そうしたら絆は絶対的で。
------いつかルフィがオレ以外の人を好きになって。
結婚して、子供が出来て。
ルフィの血が、その子供にも流れて。
ルフィの血が他人のものになっていくのを考えただけで、背筋が凍る。
歪んでる。
そんなの、わかってる。
ルフィがこんな自分の側に一生いてくれる保証なんか、どこにもない。
血縁でも、なんでもいい、一生切れない確固としたモノが
欲しくって欲しくって欲しくって。
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「エース、もう指平気。…えっ?どした?」
気付いたら、ルフィの血が体内に取り込まれた分だけ水分が身体から出ていくように、涙が零れていた。
「…っ! ルフィ、ごめ…、」
自分の歪んだ心情を隠すように、必死に涙を飲み込もうとしたら
ふわっと
ルフィの指がオレの髪に絡んで
「オレの指、まずかった? ごめん、エース…」
ルフィの指が温かくって、優しくって、胸に突き刺さる。
「ル、ルフィ、ごめっ、ごめんなっ…」
崩れ落ちるように、情けなく泣いてしまった。
「エース、エース! 大丈夫か!?」
こんなに愛してるのに。
愛すれば愛するほど、
なぜ寂しくなるの、哀しくなるの。
オレの中の愛するという行為は
なんて、臆病で、欲張りなんだろう。
「ルフィ、ルフィ、ルフィ…」
一緒に堕ちて
一緒に歪んで
どこにも、いかないで。
end
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