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『頼る-2-』※甘 ※エース視点
夢をみた。
ルフィが「エース、ごめん、ごめんな」って
涙と汗でぐしゃぐしゃになりながら泣いていた。
お前は悪いことなんてなにもしていないんだから、謝る必要なんて、何ひとつないよ?
そう言おうとしたのに、心はなぜか満たされて。
…オレなんかの為に、泣いてくれるの?
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……あれ?声?
夢と現実の狭間でうつらうつらしていると、夢で聴いていたはずの声がよりリアルに、より近くで、脳に響いてきた。
んっ…?るふぃ…?
思考がぼんやりしたまま目を開くと、夢でみた姿にそっくりなルフィがソコにいた。
「え、えーす!ごめ、ごめん…」
現実に頭が追いついていかない。
あれ?こいつ、お粥買いにコンビニに行ってくれたんだよな?
それが、なんで泣いてるんだ?
「ルフィ、なんで…」「エース!今までごめん!」
オレの声に被るように、ルフィが謝ってきた。
「えっ?なに、が?」
いきなり謝られても、なにがなんだかわからない。
「ずっと1人で色々抱え込ませて、ごめ…っ」
嗚咽交じりに、そう言われて。
ひゅうっと大きく息を吸い込んで、大きな瞳から涙を溢れさせていく。
「オレが、嬉しときとか、哀しいとき辛いとき、いつだってエースは側にいてくれたのに。オレ、エースに甘ったれてばっかりで、エースに全部1人で抱え込ませて…っ、何の役にも立たない弟で、ごめ…ごめんなっ…!」
急にどうしたんだ…?
とりあえず泣きじゃくるルフィを落ち着かせようと、細い手を掴んで抱き寄せ、ゆっくりトントン…と背中を撫でる。
どれくらい経っただろう?
大分呼吸が落ち着いてきた頃を見計らって、ルフィに出来るだけ優しく声をかける。
「ルフィ、急にどうしたんだ?外でなんかあったのか?」
そう問いかけるとルフィはゆっくりと顔を上げ、涙で滲んでいる瞳に熱を宿して、震える声で必死に言葉を紡ぐ。
「オレにはいつだって、エースが側にいてくれたけど。エースは1人でずっと大変だって、エースが倒れるまで全く気付かなくって…。情けなくって、今まで頼ってばっかりでごめん、エース…っ」
思いもよらない弟からの返答に、心底驚いた。
何を言ってるんだ?
馬鹿だなぁ。
抱き締めていた腕を解いて、ルフィと向かい合って瞳からぽろぽろと零れ落ちる涙を、指で優しく拭ってやる。
「ルフィ、本気でそんなこと思ってるのか?」
首を下げて、ルフィの顔を覗き込む。
「オレは、いつだってルフィに助けられてたぜ?
…お前がいるから、いつだって頑張れたんだ」
オレの言葉を聞いた途端、きょとんとした顔のルフィ。
「オレ、エースに迷惑しかかけてないの、に…?なんで?」
こいつには直球で言わなきゃわかんねぇか…。
「……。好きなヤツが側にいたら、頑張れるに決まってんだろ…?」
オレの恥ずかしい告白を聞いた途端、いつもの太陽のような笑顔がやっと顔を出してきた。
「オレもエースのこと大好きだ!」
泣いて赤くなってしまった目が、安心した幸せそうな色になっていく。
泣き顔も可愛いと思ってしまう位に溺れてしまってはいるが、やっぱりルフィには笑顔が一番似合う。
「だけど、オレだってエースの為に色々頑張りてぇよ!
なにかして欲しいこととか、ないのか?」
オレも兄である前に、1人の男な訳で…
オレの瞳を射るように真っ直ぐに見つめながら上目遣いでそんな事を言われたら
…淫らなお願いがしたくなっちまうに、決まってる。
『頼る-3-』に続く
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