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結婚した男
Final Marriage



南美は次の日から、大学に指輪を外して行った。

「あれ〜?指輪は?」

ルカは真っ先に気づいた。こういうカンはいい。

「…外した。返すことに…なるから」

「え?何それ?どーゆーこと?」

「離婚…するかも」

「!」

驚くルカに南美は笑顔で言った。

「でも、ルカとはゆっくり遊べるよ」







ルカには事情を説明した。
南美が思うよりも完全な政略結婚だったということを。

かといって、南美の幸せを考えて結婚させてくれた父を責める気にはなれないことを。

「…そっか。つらいね」

「でも…彼の方がつらかったと思うから」

そう言うと、ルカは肩をたたく。

「よし!じゃあ、飲みにでも行く?」

「え?」

「もう家事しなくていいじゃん。記念だよ。自由に遊べるんだから」

ルカが元気づけようとして言ってくれているのがわかったので、南美は行くことにした。








「…部長、今日どうかしました?」

仕事中に少しボーッとしてしまった渉。
後輩の山口に指摘されるまでそれに気づかなかった。

「あ…いや。何か話してたか?」

「…会議の資料持ってきただけですけど…なんか変ですよ?」

「そう…見えるか?」

「敵も多いのにスキ見せちゃマズイっすよ…」

山口がボソボソ言うと、渉は笑った。

「そうだな…今は仕事だ」

「?」









「カンパ〜イ!」

南美とルカは、小さなバーに飲みに来た。
あまり人が多くなく、にぎやかでもなく落ち着いた雰囲気。

「ルカ、ココ来たことあるの?」

「ううん。初めて。でも、1回来てみたくて」

ルカはビール。南美はサワーを飲んでいた。

「ん〜…久しぶりに飲んだ。今日はおもいっきり飲む!」

お酒は久しぶりではしゃぐ南美。
ルカはそれを見て楽しそうだ。

「南美はやっぱり笑顔だね」

「!」

女の子に言われても、嬉しい言葉。

「ルカ、大好きだよ〜」

「はいはい。酔うには早いよ」




しばらく2人で飲むと、

「何〜?女の子2人?」

同じくらいの歳の男2人が話しかけてきた。
金髪と茶髪のチャラ男。

「…今日は女だけで飲む日なの。さよなら〜」

ルカが手を振るが、金髪男に南美は肩を抱かれた。

「!」

「いいじゃん。ね?」

南美はつかまれた手を見た。渉に肩を抱かれたときを思い出した。
あのときのようなドキドキはない。

「放して〜」

波風が立たないように、南美は笑顔で言った。
すると、男は手を放したが隣に座った。

「じゃあ、乾杯!」

なぜか一緒に飲むことに。めんどくさかったルカだが、少しだけ飲んで帰ろうとした。

「名前は?」







結構、つれない態度をとっているのに男達はまだいた。
南美は酔ってだんだん眠くなりつつあった。

「南美?ごめん、トイレ行くけど大丈夫?」

「ん〜大丈夫。いってらっしゃい」

笑顔で手を振る南美だったが、ルカは不安でできれば席を離れたくなかった。
でも、もれそうだった。

「ねぇ、南美ちゃん」

「ん〜?何?」

2人がかりで南美を立たせた。

「ちょっと場所変えようか?」

「え〜?ルカは?」

「すぐ来るって」

「本当?じゃあ、行く」

男2人は目を合わせて笑った。
南美は飲み過ぎで足も少しフラフラ。
支えながら歩かされた。




「…!」

トイレから戻ったルカが焦って周りをキョロキョロ。

「南美!?」

しかし、荷物はあるのに南美がいない。
嫌な予感がしてたまらないルカは会計をして、店を出た。

「どうしよう…」

南美の姿が見えなくて、ルカは焦った。
すると、南美の荷物が残されているのに気づき、携帯を取った。

そして、電話をかけた。








「大丈夫?南美ちゃん」

異常なくらい頭がクラクラする南美は、まともに歩けなかった。
お酒に微量の睡眠薬が入っていたのになんて気づいていない南美は笑顔で答えた。

「あれ?ごめんね…うまく歩けない」

公園のベンチで休憩。
そのスキに男2人は相談。

「楽勝じゃん。どこ行く?」

「ラブホ近いし、連れ込む?」

ヒソヒソ話して、お互いニッと笑って決まり。

「南美ちゃん」

「何〜?」

「もう少し歩けばゆっくりできるとこがあるんだ…」

「案内するから行こう」

男2人にまた支えられて立つ南美。

「ルカも来る?」

「うん。必ず。今から追いかけて来るって。場所教えといたから」

「わかった〜行く」

男2人はニヤニヤと笑った。








「あ…こっちです!」

ルカは南美の携帯で渉を呼び出していた。
まだ、旦那様で登録してあったのですぐわかった。

「あ…君、結婚式にいたよね?」

「はい…忙しいのにすみません。呼んだって言ったら…南美怒るだろーな…」

「南美が大変って?」

渉が聞くと、ルカは慌てて言った。

「そうだった…南美が!男2人にちょっと目を離したスキに連れてかれて…」

「!」

「たぶんこの辺タクシーもいないから遠くには行ってないと…」

ルカがそこまで言うと、渉は車に走った。

「早く乗って!話は中で聞くから」

「は…はい」

南美を探した。







「南美ちゃん…あとちょっとだよ」

南美はもう意識が飛びそうなくらい眠かった。

「…う…ん」

妙にキラキラしたネオン街。
よくわからないながらも南美は、前に進んじゃいけない気がした。

「ルカ…は?」

「今、来るって」

「そう…」

南美は限界で寝てしまった。
すると、男2人が南美をかついだ。

「じゃ、行きますか」

ホテルに入ろうとした。

「南美っ!」

すると間一髪、渉とルカが南美を見つけた。

「…返してもらおうか?」

渉が言うと、男2人もここまできて邪魔されてイラッとした。

「ムリ。この女が寂しい〜寂しい〜言うからなぐさめよーとしてるだけだし」

「!」

渉は、南美が酔いつぶれるまで飲んだのは自分のせいだと思った。

「でも悪いな。そいつは俺の妻だ。返せ」

「てめ…テキトー言ってんじゃ…!」

「きゃっ!」

ルカが思わず悲鳴をあげた。
殴り合いが始まった。








「…うーん」

結果、渉の圧勝。
南美を連れかえる渉の後ろ姿を見ていたルカ。

「南美がホレるわけだ」








「…!?」

目を覚ました南美。起き上がった。
寝ている間は心地よかった。

ベットの周りを見ると、見覚えのある風景。
一度だけ入った…渉の部屋だ。
ふとんからは渉の匂い。
落ち着くハズだ。

「…痛…っ」

頭がズキズキする。
南美は自分の身に起きたことを思い出した。
なぜ渉の部屋にいるのかだけが理解できなかった。

「…起きたか」

渉が水を持ってきてくれた。

「え…あ…何で!?」

混乱する南美の頭を渉は優しくなでた。

「ルカちゃんが南美の携帯から電話くれて」

「!」

「無事でよかった…」

渉の安心したような声に胸がキュンとした。

「俺、もう30だぞ?ケンカなんかさせるなよ」

やっぱり大好きでたまらないと思い知らされる。

「ケンカしたの?ケガは?」

南美が心配して渉の全身を見渡す。

「…俺があんなチャラチャラした男に負けるかよ」

「…よかった」

ホッとして南美が笑うと、渉はそのまま南美にキスをした。

「…ん…っ!」

そのまま押し倒される。
手を握られ、南美はドキドキした。
だけど、一度は渉をあきらめると決めた。

「…ダメ…お兄ちゃんの邪魔はしたくない…重荷にはなりたくない」

南美がうつむきながら言うと、渉は舌をからませるような激しいキスをした。
抵抗する力も抜けてしまうようなキス。

「ん…はぁ…んっ」

南美がキスに夢中でおとなしくなるまで渉はやめなかった。
南美がおとなしくキスを受け入れると、渉が唇を離した。

「始まりは…確かに少し強引だった…だから、優花も正直吹っ切れなかった」

「!」

「でも、一緒に生活して…南美がどれだけ頑張ってるかを見て…正直、惹かれた」

南美は少し顔が赤くなる。嬉しかった。

「だから、優花とは結婚したあとだけど…別れたんだ」

「!」

「前に話があるって言っただろ?」

「…うん」

「あれな…ちゃんとプロポーズしようと思ったんだ」

南美は驚き、目に涙がうかぶ。

「今はまた微妙だから…今度ちゃんとする…」

渉の顔が少し赤いのを初めて見た南美は、嬉しくてたまらない。

「お兄ちゃん…!」

おおいかぶさる渉に南美は抱きつく。
そんな南美に渉は耳元でささやいた。

「その呼び方、いい加減やめろ」

「…え?」

驚いた南美が目を見合せると、渉がテレていた。

「俺はもう…お前のお兄ちゃんでいる気はない」

もしかして、不機嫌だったのはいつまでも「お兄ちゃん」と呼んでいたせいかも知れないと思うと、南美は嬉しくてキスをした。







「…ふ…服は?脱いだ方がいい?」

「いや…それは俺がやるから」

ベットに寝ながらのやりとり。
南美が真っ赤なので、渉もなんだかテレた。

「…じゃ…じゃあ…」

いつまでも緊張している南美に渉はキスをした。

「何も考えなくていいから…俺を感じてよ」

「!」

真っ赤になる南美の服をゆっくり脱がす渉。
南美の肌に触れて、愛しさを感じた。

南美もまた、夢にまで見た渉のぬくもりに酔っていた。

【END】



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