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強引な男
W〔END〕




「咲良〜、マジ助かった。明日もよろしくお願いしま〜す」

来夢に約束通り勉強を教えた。
図書室には行きたくなくて、教室で教えた。

『…はいはい。じゃあね』

「ばいば〜い」

『………。』

来夢は静かになんてできないタイプなので教室でちょうどよかったかも…と咲良は思った。

時間は5時を過ぎていたがまだ外は明るい。

『………。』

もうきっと図書室には誰もいないはず。
咲良は1人になると、図書室へ歩いていた。






やっぱり誰もいなくてホッとした咲良。
人の気配のない図書室だったが、誰かのノートが机に置きっぱなし。

『………。』

咲良の大好きな場所だったのに、なぜかいると苦しい。

秀也に…初めて体を触られた場所へ。
本棚から本を取ると、そこには準ではなく、忘れ物のノートが見えた。

咲良は、今自分がどっちのことを考えて…ドキドキしているのかわからなかった。

準が好きだった…はずなのに、秀也も好きになりそうだ。





「井上さん?」

『!』

ただボーッとしていた咲良は慌てて本棚から離れた。本を落とした。
声をかけたのは準だった。

「何か…見えるの?」

『あ…ダメ!』

咲良が見ていたように、本棚越しにノートを見た準は驚く。
咲良が押し退けると、準は離れたが、咲良をジッと見た。

「あの席…俺がいつも座る席…」

『!』

咲良はどうしていいかわからなくて戸惑う。

「井上さん…!」

『…!?』

すると、準が咲良にせまる。後ずさりしたが、咲良の背中が壁にぶつかる。

『藤原くん…どいて…』

なんだか準が怖く感じた咲良の体が震えた。

「何で…?」

『何でって…』

「ずっと俺を見てたんじゃないの?」

『!』

準の顔が近づき、恐くて顔をそらした咲良。
すると、準の唇が咲良の首に触れた。
ぴくっと反応すると、準は舌もはわせる。
咲良の肌の感触に、準の理性は壊れた。

『嫌…ぁっ』

咲良が抵抗すると、準がクスッと笑う。

「…井上さんってもっとおとなしいだけかと思ってた」

『!?』

「保健室で…大胆だよね」

『!』

咲良の顔が一瞬で真っ赤になる。
誰かに知られただけで、恥ずかしくてたまらない。

『嫌…助け…てぇ』

「…でも、感じるんだよね?」

咲良は涙目で首を横に降る。

秀也は誰でもいいと思っているから嫌だった。
しかし、準は…触られるのも嫌だ。

『嫌ぁっ!』

すると、準が急に離れた。
咲良は、恐くてうずくまる。ガタガタ震えた。


「咲良…嫌がってんじゃん」

『!』

秀也の声がして、顔をあげた咲良。
秀也の姿を見てホッとして、気分が少し落ち着く。

「葛西だって…嫌がってるのに襲っただろ?」

「…お前、頭いいのにわかってねぇな」

秀也がクスクス笑いながら言った。

「本当に嫌がってたら、俺だって襲わないって。わかるよ。それくらい」

「!」

咲良は恥ずかしくて顔が赤くなる。秀也は、咲良が本気で抵抗しきれていないのに気づいていた。
同時に、咲良は秀也がかなり女慣れしていることに少し落ち込む。

「…まぎらわしいことすんなよ」

『!』

準の捨てゼリフに咲良は心がズキッと痛む。
準が図書室を出ていくと、秀也と2人きりに。

「………。」

秀也が振り向いてかがむと、少し構えた。
しかし、秀也は乱れた服を直してくれた。その瞬間、押さえていた感情があふれた。

『…っ…ひっく…』

涙が流れた。もう、咲良は秀也が好きだと認めた。
しかし秀也に彼女のいる今、都合のいい女なんて嫌だ。

「…咲良、キス…していい?」

『!』

今までそんなの聞かれたことなくて、動揺して顔を背けた。

『嫌…』

すると、アゴをつかんで正面を向かされる。

「どうして?俺が好きなくせに」

『!』

余裕たっぷりにクスクス笑う秀也。咲良はすぐ真っ赤になる。

『…ずるい』

そのまま涙がポロポロ落ちた。
秀也は優しくキスをして、唇を離した。唇が離れて目が合うと、秀也はそのまま咲良を抱きしめた。

『!?』

秀也が咲良の耳元でささやく。

「よかった…」

そう言った秀也の手はかすかに震えていた。
しかし、咲良には意味がわからずに、秀也を突き放す。

『嫌っ…どうせ…遊びでしょ?』

「咲…」

『それくらい…わかる。でも、私は…そう思えない。適当に軽い気持ちではできない』

咲良は秀也の目を見て言った。何度も涙の流れた目は赤くなっていた。

『…だから…もう話しかけないで』

咲良が走って逃げると、秀也はすぐに追いつく。

『!』

「…ふざけんなよ!」

秀也は走る咲良の手首をつかむと、近くにあった机に咲良を押し倒す。

「言いたいことだけ言いやがって…逃がすかよ」

『!』

秀也が咲良の間に体を入れる。
その状態で秀也の顔が近づくと、咲良は恐くて目をつぶる。

「…お願い…」

『!?』

思いの外、秀也の声が優しかった。咲良はそっと目を開けると、秀也の顔がかなり近くて恥ずかしかった。

「…突っ込ませて…お願い」

『!』

「こんなに好きな女にジラされたことねぇし…」

咲良の頭が真っ白に。好きって聞こえた気がした。
でも、すぐにハッとして言った。

『ダメ…そんな嘘言ったって…ダメ…』

「嘘なんか言うかよ。お願い…咲良が好きなんだ。入れさせて…?」

『…ダメだよ。だって…きっと…葛西くんが知ってる誰よりヘタクソだもん』

「!」

『葛西くんに…嫌われたくない…』

秀也がうつむいて、少しテレていた。

「マジ…かんべんして…」

『?』

秀也が理性と格闘しているのなんて、咲良はまったく気づかなかった。

「ずっと…本棚の陰から藤原を見る咲良を見てた」

『!』

「いつか…俺の方を向かせたいって思ってた」

秀也が髪をなでる。咲良はドキドキしていた。

「だから…俺のモノになって」

『!』

咲良は真っ赤になって目が泳いだが、思いつくままにしゃべった。

『…はい』

「!」

『でも…!』

秀也に襲われないうちに止めた。

『すぐは…無理。恥ずかしくて…できない』

「………。」

秀也の表情が曇ると少し不安になる咲良だったが言った。

『でも…私…葛西くんが好き…だと思う』

「!」

『だけど、すぐは無理なの。恥ずかしくてたまらないし、ただの…体だけの関係にはなりたくない』

咲良の顔が耳まで真っ赤になる。

『…でも、もし待ってくれるなら…私の初めての人になって』

「!」

真っ赤で火の出そうな咲良の顔を見た秀也は、満足気に笑った。

「…わかった…待つよ」

そう言って抱きつく秀也に、咲良も少しだけ抱きつく。
すると、咲良の太ももをなでる手。

『ダ…ダメ!待つって…』

「待つよ」

クスクス笑う秀也は小悪魔のようだ。

「でも…少しずつ…俺に慣れて…?」

『嫌…ぁっ。嘘つき』

「嘘なんて言ってないだろ?咲良が…好きだから触りたいんだ…」

すると、咲良の抵抗が弱くなる。

『ずるい…』

秀也は満足そうに笑って今までになく優しいキスをした。
それからネクタイを外して渡した。

「咲良のものだ…」

『!』

まだまだ…これから。



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