強引な男
U
『………。』
図書室に行くのが気が重い。咲良の足はなかなか進まない。
嫌なハズなのに…どこかでもう一度、あの感覚を味わいたいという気持ちがあった。
そう思うたびに自己嫌悪になった。
『…返さなきゃ…』
そのためだけに会いに行くと…まるで言い聞かせるように、秀也のネクタイを手ににぎる。
『葛西(かさい)くん…?』
秀也を呼びながら、昨日の本棚の陰に行くと、昨日の場所に秀也はいなかった。
ホッとした…だけじゃなく、ちょっと残念な気持ちもあった咲良は、そんなの嘘だと気持ちを打ち消そうとした。
「やっぱり…来たんだ」
後ろから耳元でささやかれ、ビックリして逃げた。
壁側に逃げたら、両脇には本棚があって、逃げ道がなくなってしまった。
『ち…違う。ネクタイ…返そうと思って…』
目を合わせずに言うと、クスクス笑う秀也。
「…ウソつき」
『え…?嫌…っ!』
秀也の手を払いのけようとしたが、それより先に口にネクタイを巻かれた。
「…今日は…急ごうか。邪魔されないように」
『んん…っ』
ネクタイを取ろうと思ったが、秀也はお構いなしに服の中に手を入れてきたので、払いのける。
しかし、秀也は手をどんどん上へ。
昨日と同じで、秀也の手は少し冷たい。
「本当に嫌なら叫んでみなよ」
『!』
昨日より早くブラのホックを外される。
「いつもいる…藤原くんが助けてくれるかもね?」
秀也は、首筋にキスをしながらクスクス笑う。
『…んっ…っ』
咲良は、体が反応してしまうのが嫌だった。
秀也の柔らかい唇が首筋を這(は)うと、体が熱くなる。頭がクラクラする。
「そうやって…素直に感じて…かわいいね」
『!』
秀也の意地の悪い笑顔が目の前に。咲良は一瞬で顔が赤くなり、うつむいた。
すると、秀也は咲良のブレザーの中のブラウスだけを下からクルクル巻いた。
『ん…!』
ヘソが見えそうなくらいで、全力で抵抗したが、ほとんど無意味だった。
でも、咲良はここで抵抗しなきゃ…と必死だった。
「…結構力あるね」
秀也の手が止まる。
やめてくれるんだ…と、ホッとして力を抜くと、一気にブラごと上まで捲(まく)る。
『んーっ…!』
涙がボロボロと流れる咲良。初めて…他人に見られた裸。
「…さすが手付かずって感じ…?真っ白だ…」
秀也の姿を見たくなくて、やめて…と願いながら、目を閉じて震えていた。
「…赤く…汚したい」
『んー…っ!』
咲良の息がどんどんあがる。
優しく触っていた右胸とは反対の左胸の乳首を、激しくむさぼるように、舐める。
体はビクビク痙攣(けいれん)する。
転がしたり、吸われたり。反対側も指でクリクリ。
力は入らないのに、反応だけは大きい。
なんだか下半身が熱い咲良は、足を閉じる。
そうしないと、何か溢れてしまいそうだった。
『ん…んんっ…』
咲良は気持ちよすぎて…心臓がドキドキして、思わず秀也の肩にしがみついた。
「!」
『!』
秀也だけじゃなく、咲良自身も驚き、慌てて手を離すと…今までになく真剣な目をした秀也がほほを撫でる。
見たこともない秀也の顔に、咲良は目をうばわれた。
秀也の指先がほほに触れただけで、感じた。
「…優しくするから…」
『!』
うまく頭が回らないままだったが、優しくほほを撫でる手に、胸が高鳴った。
「咲良…足、開いて」
『…んん…っ』
嫌なハズなのに、咲良は足をゆっくり開こうとしていた。
「咲良〜…?」
『!』
小さい声で何度も名前を呼ばれた。
どんどん近づく声。
来夢だった。
来週からの約束を数学だけじゃなくて、古文も増やそうとして、咲良を探していた。
『………。』
一瞬、時間が止まったように秀也と見つめあう。
「…行くな。黙ってれば…気づかない」
秀也が真剣な目で言ったが、咲良は見つめあってしまったことにハッとして、制服を直して、最後にネクタイを外した。
『洗ったんだけど…ごめん。確かに…返したから』
秀也の手にネクタイを置いて、来夢の元へ。
流されて…裸まで見られた咲良は、もう自分が嫌いになりそうだった。
「ねぇ〜?秀也の彼女って誰かわかる?」
1日たってもまだ理乃は秀也の彼女探しをしていた。
「知らねぇよ」
秀也の友達からちょっとウザがられている理乃。
少しかわいそうだが、今日はきっとネクタイしてくるはずだ。
そう思っていると、秀也が登校。
理乃は、せつな気に秀也を見て…落ち込んだ。
秀也がネクタイをしていなかった。
これには咲良も驚いた。
「秀也ぁ〜っ」
隣のクラスのロリ系のかわいい女の子=晴美(はるみ)が秀也の腕に抱きつく。
「晴美、ちょ〜嬉しい!」
笑顔ですりよる晴美は、猫のようだった。
しかし、理乃は泣きながら立ち去る。
晴美は、秀也のネクタイをつけていた。
『!』
咲良も驚いた。
自分で突き返したハズなのに、もやもやする。
「晴美〜幸せ」
「…また、後でな」
晴美の腕から自分の腕を抜いて、秀也は自分の席へ。
一瞬、目が合うがすぐにそらした。
…咲良は気分が少し暗くなるのを感じたが、きっと理乃が泣いていたからだと思った。
『………。』
図書室に行くと、まだあんまり人がいなくていつもより静かだった。
一人で静かに本を読んでいた。
「井上さん」
『は…はい!?』
集中して本を読んでいて、名前を呼ばれてびっくりして、声が少し大きくなった。
みんなの冷たい視線が集中したので、頭を軽く下げて謝罪。
…恥ずかしい。
「びっくりさせてごめん。俺のせいだね」
名前を呼ばれたことに驚きすぎて、声をかけたのが準だと…今気づいた。
『あ…いえ…そんな…』
恥ずかしくて下を向いていると、準が正面に座る。
「………。」
準は黙って勉強を始めた。
いつもとは違う席だけど、自分の正面にいる準に、咲良はドキドキした。
真剣に参考書を見つめていかたかと思えば、時々シャーペンをクルクル回して考える姿は子どもみたいだ。
クスクス笑いそうになると、準がこっちを見そうになったので、慌てて本を読む咲良。
顔は少し赤い。
「!」
準は勉強に集中していて、外を見て驚いた。暗くなっていた。グラウンドの部活も片付けをしていた。
「井上さ…!」
咲良に呼かけようとしたが、準は咲良が寝ているのに気づいてやめた。
「…え…さ……」
咲良の頭の中で声がする。聞き覚えのある声。
「井上さん…」
準が隣で優しくゆり起こす。
『…!』
寝ていたことに気づいた咲良が慌てて頭を上げると、
『ごめんなさ…っ』
「!」
至近距離に、準の顔があった。
『あ…ごめん…なさい』
咲良が顔をそらすと、準も少しテレていた。
「…ごめん。気づかなくて…外、暗くなったね」
『え…?』
外を見た咲良は、もう夕日が沈んでいたのに驚いた。
すると、準がクスクス笑って言った。
「…一緒に帰ろう。送ってくよ」
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