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短編・中編
ようこさまより「委員長が珍しく本気の嫉妬をする」(5700000キリリク)
 年に一度、男臭い学校内に女装じゃないスカートが拝める日。学園祭(時々女装した本校生徒もいる)
 その日―――招待制だから限られた人数だけど滅多に拝めない異性の登場に、生徒達は今まで男だらけで麻痺していた感覚が正常さを取り戻し、浮足立った。美人の同級生よりも、多少容姿が落ちようが本物の女の子が魅力的に映るのは仕方が無い事だ。



「まぁ男子校マジック差し引いても、そこらの女装男子よりも私の方が数段美しいことには変わりないけどね」
「……俺の心の声に返事するのも、大声で敵を作るのも止めてくれ」

 一般招待客を受け入れる2日目。廊下を歩く俺を誰もが驚いて避けるのは、俺が生徒会長だからだけじゃない。
 誰も寄せ付けない俺様会長で通っている俺が、淡いピンク色のワンピースに身を包んだ美人と並んで歩いているからだろう。


「だって、私が何のために充にチケット送って貰ったと思ってるの。全寮制なんてとこに通ってる金持ちのボンボンを捕まえるためでしょーが」
「知らないし。俺がチケット送ったのは母さんで、あずみちゃん宛てでもないし」

 あずみちゃんは、俺と3つ違いの大学生だけれど母方の叔母にあたる。俺は父親似なので、2人で歩いていたら叔母甥の関係にはまず見えないと思う。
周りに聞こえないように小声で話すため、俺があずみちゃんに向けて顔を寄せるたびに「ぎゃあああ」と微妙に甲高い悲鳴が聞こえる。学園祭でもうちのチワワ生徒は通常運行だった。

 悪いけどこの学校で容姿の良い男と言ったら変態とかストーカーとかド鬼畜ばっかりだから、面食いのあずみちゃんがお金持ちの恋人をゲット出来る確率は少ないと思う。しかも俺が隣に居るし。そう言ったら「じゃあ消えて」と即答されそうなので黙っている。だって、これは俺にとっても会長は外に彼女がいると勘違いして貰えるチャンスなんだ。

 なんだったらコレを機会に、門屋(日本語が通じない)ヒカリとか村上(エロ魔人)聡とかが俺のケツを諦めてくれたら夢のようだ。


 とか思ったら夢でした。




「よぉ、うちの会長様がレベル高い美人を連れてるって聞いたんで飛んできたぞ」

 見たこともないような優男風の笑顔で俺達の前に立ったのは、つい一昨日も俺の脇を掴んでガンガンに腰を振っていた風紀委員長だった。

「あら充君のお知り合い?」
「こんにちは。風紀委員の村上と言います」

 充君!?聞いたことのない君つけに背筋が寒くなる。そんなあずみちゃんは今日一番の笑顔で村上を見上げている。
 村上は村上で、普段生徒達に見せる不遜な表情でも俺に対する時のエロエロしいフェロモン駄々洩れ顔でもない、普通に好青年(美形)!で対応していた。2人の気持ち悪さに、思わず一歩後ろへ下がってしまう。

 にこやかに挨拶し合う2人を眺めていたら、美形同士、これはこれでかなりお似合いなカップルになると気がついた。いや、村上を叔父さんとか呼びたくない。完璧な絵図らに変な気持ちになったのは、そんな恐ろしい想像をしてしまったからだろうか……。

「葛西、悪いがこれから午後のスケジュールと警備で少し相談があるんだが、いいか?」
「え、ああ……」
「彼女なら、風紀の方で校内を案内しておこう」

 いい男を探す予定のあずみちゃんが何と言うか心配だったけれど、強面な風紀の中で唯一爽やかな副委員長がエスコートしているので全く問題なさそうだった。むしろ嬉々として俺に手を振っている。

 一番近い風紀室で良いかと聞かれ、頷いてからついて行く。


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