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短編・中編

「……なぜ、こんな事になってるんだ。」

 目が覚めれば―――床に座っていたはずの俺は、ベッドで村上に後ろから抱き締められていた。


「ああ…起きたか。」
「う、ひゃあ!?」

 いきなり首元で囁かれ、掠った生温かい感触に変な声が出た。
 そんな俺を鼻で笑いながら起き上った男は、なぜか「美味かったか?」と聞いてくる。

「…な、なにが?」
「コロッケサンド。」
「ええ!?」
「――お前、寝ぼけながら食ってたぞ。」
「えええっ!?」

 まぁ可愛かったけど、と寝言をいう村上を放っておきながら……そういえば刺すようだった胃の訴えが綺麗さっぱり消えている事に気がついた。

「しかも、2つも食いやがった…。」
「ええー…。」

 まぁ可愛かったけど、と再び寝言を繰り返す村上を放っておいて、掛け時計を見て思わず跳ね起きる。

「授業終わってるし!」
「…まぁ、そうだな。」
「お邪魔しました!…あ、ご馳走さまでしたっ!」


 サボっちゃったよーっ!
 俺さま会長だけど、授業だけは真面目に出てたのに。

 まだ何か言いたげな村上は無視の方向で、俺は急いで仮眠室を出る。


「あ。」
「え。」
「……あ。」

 勢いよく開けた扉の向こうには、当然数人の風紀委員がいた。

 全員が、目を見開いて俺を見てから―――後ろからのっそり姿を現した委員長に目を向ける。
 これは……なんか、マズイ気がする。

「やっぱりお二人は……。」と呟く風紀の一人に、

「誤解だ!コロッケサンドが夢で…いや、寝てた…いや、アレだからなっ!!」


 と必死で言い残し、俺は脱兎のごとく風紀室から逃げ出した。
 去り際に村上の爆笑が追いかけてきたが、もうそんなことはどうでもいい。



おわり


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