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短編・中編

 ――で、なぜか折角の土曜日に、男2人で出掛けるとかそんな事になった。
 行先は俺が決めていいと言われ、普段なかなか行けない場所が思い浮かんで…結局、そこに決まったんだけど。


「……男2人で水族館って、正直、どうなんだろう…。」
「イイ男が揃って、魚も大喜びじゃねーの?」


 全然楽しくないです、先生。


 水族館デート、本当は可愛い彼女との初デートに取っておいた憧れのシチュエーションだったのに。何を間違ったらこんなデカイ男2人で…うう。

 しかも、普段の服装のセンスが無いらしく、「お前はジーンズと無地しか着るな」と家族からも言われている俺と違って、何やらどこかのモデルさんですか?という出で立ちの村上。正直、同じ男として嫉妬です。

「いやいや、俺だって…顔立ちは悪くないって言われてたし…会長だし…。」
「――なにブツブツ言ってんだ?」


 巨大な水槽に映る男前を恨めしげに睨みながら、思わず声にまで出ていたようだった。咄嗟に「魚が」と言った後の言葉が続かない。

「魚…だろう、そりゃ。」
「デスヨネ。」


 うわあああああ!なんだこの空気!キモ!俺もそうだが、隣の人気持ち悪い!!お母さん助けて!


 なんだか生温い空気が漂っていて、振り払うように慌てて目の前の分厚いガラスにへばりついた。
「おおおお!お…美味しそう、な……?」
「―――は?」

 ぎゃあああ何言ってんの俺〜〜〜〜っっ!



 もう自分で何を言ってるのかもわからない大混乱。
 あわわしていたら、ふいに村上が、かけていた眼鏡を外して俺にかける。あ、伊達だ。

「……?」
「――かけとけ。」

 は?伊達だから問題ないですが…え、あまりのダサさにお洒落眼鏡貸します的な、それですか?
 俺の疑問符が浮かぶ視線を逸らすように、男前はそっぽを向いた。


「――お前、目立つから周りからジロジロ見られてる。俺のモンなのに気にいらねー…。」



 俺は村上のモノでもなければ、こんな薄暗い水族館で魚以外を見る人間はそうそう居ないとか、突っ込みどころは万歳だったんだけれども。
 …子供っぽい仕草の風紀委員長とかを見るのが珍しくて、つい何も言えなかった。


 いやいや、俺がチキンだからとかそういうんじゃなくて―――まぁ、それも多少は、ある…かもですが。


 結局、無性に気恥ずかしくなった俺達は、最後まで無言のまま、泳ぎ続ける魚をただ眺めた。


  おしまい。

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あきゅろす。
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