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おやっさん日給1万5千円(完結)

「そうなんだよー、実は彼ちょっと変わった性癖もってて…同居のおやっさんの募集年齢が高めだったのもその所為だったんだけどねーはっはっはー!」

 大人の男の良さを教えてくれたりして、なんとか軌道修正してやってくれたらボーナスだすんだけどね!はっはははは!

 と毎度の高笑いを店中に響かせるのは俺の雇い主でもある白衣眼鏡、もとい博士だ。


 当の寿はといえば、今日も悪との戦いに大型バイクを転がして走り去って行った。命を駆けて戦う姿は正直格好イイ。ショタコンじゃなければ。

 1年前に秘密結社に誘拐され改造されてしまった彼は、命からがら脱走し、この胡散臭い博士に拾われたという。それからは組織との戦いに明け暮れ、今がある。
 まだ18歳の青年が背負うには大きすぎる。確かに理解者が必要だし、多少子供っぽいとは思うが悪い人間ではない。ショタコンじゃなければ。


「アレですかね、改造されたせいで何か内面的に衝撃とか受けて性癖が偏っちゃたっとか…「いや、元々みたい」…へぇー…。」



 博士が俺の淹れたコーヒーを口に運び、「マズ」と眉をしかめた。

「僕、濃いの苦手で砂糖多い目って言ってるじゃないですか田中さ〜ん。」
「ああ、スミマセンね。年なもんで、最近物忘れが酷くって。」

 まだ30でしょ、と唇を尖らせて抗議する白衣の雇い主を無視してスポーツ新聞を読む。

 お試し期間とはいえ、俺がここで暮らし始めて1週間が経った。

 寿青年は2、3日に一回は目の前の博士からの連絡で慌てて飛び出して行き、入れ違いに連絡を入れてきた当人が此処へやって来る。で、マズイと文句を言いながら俺の淹れるコーヒーを飲み、よくわからない世間話をして去って行く。

 結局のところ、同居している寿青年が悪と戦うライダーに変身するヒーローで、博士は全面的にそれをサポートする謎の人物。それだけしか分かっていない。
 いや、あと寿が小さい少年が好きだということだけはわかった。それは知りたく無かった。


 仕事自体はどうも住み込み家政夫そのものだ。それに不満はない。
 同居ヒーローも普段はそれなりに可愛らしいとさえ思える。ショタコンじゃなければ。




「…あー、そういえばこの前、隣の奥さんから苦情きました。」
「え、なに?この近所で戦闘あったこと無いんだけどなぁ。」
「……お隣の子供が小学生なんですがね、毎朝挨拶したらケツを揉まれるそうです。」
「あー…。」
「寿は最近まで僻地の島国に住んでたんで、ついその国での挨拶がでちゃうんですって言っておきましたが。」
「…ナイスです田中さん。」

 そんな国があったら見てみたいわ。
 奥さん信じてくれてありがとう。


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