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 自信があると言った言葉通り、確かに松本の口淫は手馴れていた。
 けれどやはり多少の経験があるといった程度で、過去経験してきた女達には遠く及ばない。

「……っ」

 それでも松本の唇の感触や温かい口内、必死に奉仕する舌先の刺激に俺のモノは完全に勃ち上がった。

 昨日まで親友だった男が半裸で自分に奉仕している異常な状態に興奮しているのかとも思ったが、これが藪だとしたら、今こんな風にはなっていないだろう。駄目だ、藪を想像しただけで心が萎えた。

 松本祐耶は学園で初めてできた親友だ。
 努力の賜物である優秀さを持つ自分と、自然体で肩を並べる男。その男と、身体を重ねる?

「松本」
「ん、……?」

 上目使いで俺を見る黒い瞳は欲望で濡れていた。そこに映る俺の姿も、きっといつもとは違うだろう。

「……今なら、まだ無かったことにも出来るけれど、ここから先で待ったは聞けないぞ」

 自分の声が、気持ち悪いほどかすれている。

「―――止めて欲しいなんて、言ってねーだろ、んっ」

 厭らしく濡れた唇が俺のモノを離して弓形に歪んだ瞬間、衝動的に後ろへと押し倒していた。

「ん、んっ、ふ、っ」

 噛みつくように口づけてから、ゆっくりと喰らいつく。強く舌を刺激しながら息をつかせないリズムで蹂躙する。首筋や頬を撫でる手とは反対の利き手は、見えない松本の下半身を剥いていく。
 はじめは戸惑っていた松本の指が、俺のシャツを捲っていった。



 試したいだけ、と親友は言った。
 その言葉が嘘か本当はか置いておいて、松本が抱かれる側に立ったことが無い―――もしくはほぼ経験が無い事はすぐに知れた。
 下準備はしてきたと豪語した癖に、指が3本に増えた時点で痛がった。止めるか?と聞けば目元を潤ませて「いいから」とキスを迫る。

「イッ……て、ぇ。全部入っ、た…?」
「まだ、半分……ちょっと我慢しろ」
「デカ過ぎ……ハハ、まじかよ、ハッ、く、ぅー…ん、んっ」

 時間をかけて全てを埋め込んだ時には、思わず2人して笑ってしまった。
 少しの間動かないで抱き合えば、互いの汗が肌を伝い、無言で何度も唇を啄ばんだ。それこそ、恋人のように何度も口づけ、少しだけ腰を引く。

 痛みしかなかっただろう挿入と違って、硬い陰茎が内部から出て行く感触に松本の秘部が震えた。何度もゆっくりと出し入れしていくうちに、強張っていた四肢が弛緩していくのがわかる。そしてある一点で、小さく甘い声をあげた。


 動物みたいに、腰をぶつけあい重ね合う。
 咄嗟に浮かぶ言葉を発しようとするたび、タイミングを見計らうように松本の腕が俺に伸びた。会話を嫌う仕草に、ただ応える。代わりに甘い唾液を数え切れないぐらいに交換して、親友は別の何かになった。





 3度目の体内射精で一緒に絶頂し、気絶するようにして眠ってしまった松本の後始末をしてから、起こさないまま同じベッドで横になった。

 身体を丸めて眠る松本は、子供のようだった。
 抱き寄せようとして―――手を止める。
 長い睫毛に指を這わすのも、薄く開いた唇にもう一度口づけるのも、朝目覚めて互いの気持ちを確認し合ってからだろう。




 そう思って閉じた瞼を数時間後に開けた時には、隣にあったはずの温もりは消えていた。


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