Short
過。(佐助×政宗)☆★
とある友人の誕生日プレゼントに作った話。
初めてマトモに書いた小説だから、これを最初に載せてみました。
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☆・・・政宗目線
★・・・佐助目線
☆
それは、とある街中で逢った。
「政宗・・・ッ!」
・・・俺は、即行回れ右をして逃げることにした。
しかし・・・
「おぉー・・・足、速くなったねー」
・・・と云う声にビクッとする。
横を見ると、さっきの男が“歩いて”ついてきていた。
一応云っておくが、こっちは野球部のAceである。
短距離が得意と云うわけではないが、それでも割と早いはずである。
・・・のに、こんなコスプレ男が“歩いて速度が一緒”なんて・・・・・!!
「・・・・ッ、テメェ・・・」
無駄だと悟った俺は足を止め、Orange色の髪の男に目を向けた。
「どうして俺の名前を知ってんだ・・・?」
すると、男がきょとん、とした。
「知ってるも何も・・・
恋人同士じゃない」
・・・え、何、この人そっちの気がある奴?
「人違いじゃねーの?」
「まさか」
人懐っこい笑顔を見せられ、少しキュンとする。
「隻眼の伊達政宗なんて、後にも先にも一人でいいから」
そう云って俺を抱きしめようとして・・・掠った。
俺は全く動いていない。悪しからず。
・・・って、ことは。
「Well・・・・・」
幽霊って、初めて見た。
☆
とりあえず幽霊と判った以上、一人でしゃべってるのは流石に恐いだろうと思い(周囲の目が痛い・・・)、ウチに来るように促した。
「・・・で、What's your name?」
「政宗、南蛮語解んない」
「・・・・・。名前は?」
南蛮語て・・・・・。アレ英語だろ?
「俺様は猿飛佐助・・・え、本当覚えてないの?」
「いや寧ろ初めましてと云うべきだろ。・・・っていうか、猿飛佐助って実在したんだな・・・」
と、場違いな感想を漏らす。
彼曰く、俺の前世(?)では禁断の恋状態で、いつも佐助が甲斐から奥州まで来てくれていたのだと云う。
・・・まぁ、前世だけど。
「よっぽど大切にされたんだな、その伊達政宗って奴」
「まぁねー・・・っていうか、あんただし」
その辺が噛み合ってなかったが。
「・・・実体があれば、あんたに抱きついて押し倒すことが出来るのに・・・」
実体がなくてよかった・・・。
「え、何それ!?実体なくてよかったって酷ッ・・・」
「地の文を読むな、Crazy」
そう云って椅子から立ち上がる。
「あれ、政宗・・・?」
「Dinnerの準備だ。アンタは知らんが、俺はVery hungryだからな」
本当に俺はアイツと付き合っていたんだろうか・・・
☆
今日は面倒臭くなったので焼飯にすることにした。
その間に佐助は部屋の中を物色している。
・・・まぁ、荒らすワケでも無さそうだしいいけど・・・。
「あ、政宗ー」
「Un?」
「コレ何?」
そう云ってヒラヒラさせているのは医療用の眼帯。
「それは俺の眼t・・・・・」
そこでオカシなことに気づく。
実体・・・ないんだよな・・・・・?
ないなら・・・“何で眼帯を持てるんだ”・・・?
不思議に思った俺は、リビングに置いてあったジャ●プSQの背の部分で佐助を殴ってみる。
―ガスッ
「ちょっ、何、政宗!?痛ッ!そんなに触っちゃいけないものだった!?」
しかし俺は、佐助の言葉など耳に入らず、ただぼぉっとジ●ンプSQを見ていた。
手応えがあった・・・・・。
「・・・さすけ、」
今度は彼の頬を引張ってみる。
・・・伸びた。
「ひひゃい!!ひゃひするの?!」
「・・・Why?」
「え?」
「何で、アンタに触れるんだ・・・・・?」
☆
俺もカナリ驚いたが、それ以上に佐助が驚いていた。
「痛いって感覚とか・・・すっごい久々・・・」
驚いた上で・・・感動していた。
・・・しかし、何でだろう。俺にとっては、佐助の反応よりもそっちの方が重要だった。
・・・そこで、あることに気づく。
「佐助」
「何??」
「それ置いてみろ」
そう云って眼帯を手放させる。その直後、佐助の身体が半透明化した。
「・・・え」
それを見て俺は確信し、同時にあることを実行する。
―サッ
「・・・・・!!」
俺の意図に気付いた佐助が手早く眼帯を懐に忍ばせた。
「Shit・・・アンタなぁ・・・」
「だってさ・・・持ってないと、あんたに迷惑かけてばっかりだしさ、手伝えないじゃん?」
「・・・・・」
とりあえず、目を瞑る事にした。
☆
そうして、佐助は何故かウチに住み着いてしまった。
しかし、学校に行っている間に部屋の片づけをしておいてくれたり、帰宅時間に合わせて夕飯を作っておいてくれたり、買い物に行ってくれたり、朝は朝で弁当を作ってくれたりしていた。
それはとても有難いのだが、同時に“俺に投影した伊達政宗公の為”なんだろうと思うと、哀しくなった。
哀しいのと、申し訳ないのと。
「・・・・・、・・・竜、独眼竜?」
ハッとして我に返ると、長宗我部が心配そうにこちらを見ていた。
「Sorry・・・ボーっとしてた」
「まぁいいけどよ・・・それで飯食うつもりか?」
「・・・・・」
右手に持っていたのはいつも使っている細身のシャーペンとボールペン。
慌てて持ち替え、残り少ない昼休みで佐助が作ってくれた弁当を食べ終える。
「伊達がボーっとしてるなんて珍しいな」
「Ah?まぁな・・・たまにはそういうこともあんだよ」
そう云うと、長宗我部は興味なさそうに「ふーん」とだけ云い、持っていたパインミルクを飲んだのだった。
☆
帰りの電車の中で、揺られながらふと思った。
もし今、佐助がいなくなったらどうなるんだろうと。
元に戻るだけ、とはどうしても思えなかった。
もうすぐ、彼が居候となって一ヶ月になる。
その間に、佐助の素性や性格とかを知ることができた。
俺もそれなりに心が開けてきたと思う。
そんな彼がいなくなってしまったら。
俺は、正気を保っていられるのだろうか。
「Ha,俺らしくもねぇ・・・」
所詮居候なのに、どうしてこんなに佐助のことで不安になるんだろう・・・・・?
★
あのころの政宗とまったく一緒だった。
誰も知らなくて、どこかも判らない街の中で俺は恋人を見つけた。
・・・正しくは、「元」恋人。
今は別人だけど、俺のことを“佐助”と呼んでくれた。
期待していいのかな。
記憶がなくてもいい。一緒にいれることがただ嬉しかった。
俺にとっては“戦国時代の伊達政宗”も、“平成時代の伊達政宗”も同じぐらい好きで、比べられなくて。
「まぁ、片想いですけどね・・・」
洗濯物を片付けたあと、紅茶を入れながら独りごちる。
それでも、一つ屋根の下で、一緒にご飯を食べたり、隣でテレビを見れたりするのだから、感謝こそすれど、文句なんてお門違いもいいところだ。
「それで、右目の旦那は何しに来たの」
俺はテレビから目を離さずに訊く。
「テメェに用はない」
「ふーん・・・あっそ」
そう答え、紅茶を少し飲む。林檎の甘い香りが鼻を擽(くすぐ)った。
「政宗様は元気か?」
「元気だよ。相変わらず母親とは不仲らしいけど」
「そうか」
そう云うと、右目の旦那はつ、と俺を見た。
「政宗様に何かあったら・・・」
「もう、過去に縛られなくていいんじゃない?」
途中で遮る。あまり聞きたくなかった。
「それに、何か合わせる気もないしね」
「・・・・・そうか」
そう、短く返事をした。
「・・・これからも政宗様を頼む」
「はいはい・・・っと」
そう返事をすると、右目の旦那はくすっと笑って消えた。あの人も何考えてたんだか。今まで成仏できてなかったってどれだけ俺の政宗に心酔してんだよ・・・。
そう思い、ふと壁時計に目を向けるともう6時半。
「夕飯の支度、忘れてた・・・・・」
★
それから30分後、定刻通りに帰ってきた政宗の様子がおかしいことに気付く。
「お帰り。何かあったの?」
「Don't Worry・・・何もねぇさ」
それが強がりだってことぐらいは解っていた。
解っていたからこそ、敢て深追いするような真似はしない。
「そっか。何かあったら相談しなよ」
「Thanks、佐助」
そう笑う。
それを見て俺の胸はチクリと痛む。
そんな哀しい笑顔なんて、見たくないのに。
「荷物置いといで。もうご飯出来てるし」
「OK、すぐ行くッ」
その間に鍋から器に料理を移し、台所から居間へと運ぶ。
“てーぶる”に運ぶか運ばないうちに、“すぅぇっと”に着替えた政宗が入ってきた。
「Hun・・・うどんか」
「ごめんね、今日ボーっとしてて何も買ってなかったの」
午後に“思わぬ客人”が来たことは伏せておく。
きっと覚えてないだろうしね。
「別に構わねぇよ。ある物で食えんならそれに超したことはねぇし」
俺の内心には気付かない政宗がそう笑いながら云う。
こちらもそうだねー、とか云いながら政宗の向かいに座る。
「「いただきます」」
実体化できるようになってからは一緒にご飯を食べるようにしていた。
“空腹”という感覚があった、というのも理由のひとつだが、それ以上に政宗と一緒にいる、ということが何より嬉しかったから。
一度本気で“学校”に一緒に行こうとしたが、それは政宗に懇願されて渋々止めたということもあったし。
政宗といれることがこんなに幸せなことだったなんてあのころには気付かなかった。
「何、人の顔見てニヤけてんだよ・・・気色悪い」
「あはは・・・気にしなくていいから」
「何だよ、それ」
もの凄く不審がられたけど気にしない。
「ただ幸せなだけ」
そう云って笑うと、政宗もつられて笑った。
けれど、やっぱりどこか影のある笑顔。
「・・・でもさ、政宗、」
「Un?」
笑顔を引っ込めた俺に気付き、訝しげな表情になる。
「何かあるならここで全部吐き出しちゃえば?話ぐらい聞くよ」
☆
「話ぐらい聞くよ」
そう云われてドキッとする。
そんなに表情に出ていたんだろうか。
「無理にとは云わないけどさ・・・何か見てて辛そうだし」
「・・・・・」
本気で心配してくれているのが解った。
「・・・ヒかない?」
「何で俺様がヒかなきゃいけないのよ」
そう佐助が笑うと、音もなく立ち上がり、俺の横に座った。
「云ってくれると嬉しいんだけどなー・・・」
そう云って、俺の髪をクシャクシャと撫でる。
「・・・・・ッ」
なんだか泣きたくなった。
「・・・佐助、」
「うん?」
「アンタも、そのうちいなくなんの・・・?」
ピタ、と一瞬だけてが止まる。けれど、それは一瞬。
「どうだろうね。いるかもしれないし、いなくなるかもしれない」
「・・・・・」
やっぱり。人って云うのはそういうものだろう。
「でもさ、」
「・・・・・Un?」
「いなくなるときは、あんたが死ぬときか、嫌われるときか・・・成仏するときだけだよ」
「・・・・・ッ」
不覚にも、泣いてしまった。
本心から安心しきってしまって。
「さす・・・けぇ・・・・・・」
「はいはい。どうした?」
さっきの電車の中でのことを話した。
すると。
「別に、あんたに“竜の旦那”を投影してないよ」
「・・・・・え」
「似て非なる者だしね」
似て、非なる、者。
小声で繰り返すと、そうだよ、と佐助は云った。
「確かに姿形は似てるけど別人だよ。少なくとも、俺様はそう思ってる」
「・・・・・ッ」
思わず佐助に抱きつく。
「政宗・・・?」
「・・・いなくなるな、馬鹿・・・ッ」
そう云うと。
「いなくなんないよ」
クスッと笑う佐助に安心し、彼の腕の中で意識を手放した・・・・・・
★
「ごめんね、政宗。俺様、また嘘・・・吐いちゃった」
そう云った俺の視線の先には、泣き疲れて眠ってしまった政宗の姿が。
彼を抱きしめている俺の手は透けてきていて。
それは、俺がこの世にとどまれる時間が少ないことを意味していた。
懐からあの日にもらった眼帯を取り出す。
触れは出来ても、透けるのは変わらなかった。
その眼帯に近くにあったペンでササッと手紙を書くと、それを彼の手に握らせた。
「ごめんね、政宗・・・」
サラリ、と髪を撫でると、んぅ、と反応するが目が覚める様子はない。
それが少しばかり哀しかったが、そんなことを云ってられるほど時間はなかった。
どんどん消えてゆく俺の身体。
最後ぐらい、南蛮語―英語を使ってみようか。
「あいらびゅー、政宗」
そう呟いて政宗に口付けた刹那、俺はいなくなった。
☆
あれから数ヶ月。佐助がいなくなったあの日は流石に荒れ狂ってしまったが、その翌日には落ち着くことが出来た。
やっぱりFriendの力は大きい。
長宗我部や真田たちのおかげで、何とか立ち直ることが出来た。
けれど・・・
未だに部屋の鍵を開けたときに「ただいま」と云ってしまう癖は直っていない。
たった一ヶ月、されど一ヶ月。
数ヶ月たった今でも、目を瞑ればアイツの笑顔が蘇る・・・・・
☆
「政宗殿!」
「Un?・・・真田か、どーした?」
それは更に数ヶ月経ったある朝。
「転校生が来るらしいでござるよっ」
「Transfer student?」
学期の初めならまだしも、こんな時期に・・・。
「左様!転校生の顔を見に行きませぬか?」
「Ah・・・OK。一緒に行くか」
(アンタの最期の言葉、覚えてるか?)
(勿論、覚えてる)
(俺はあの言葉で、過去を思い出せた)
(そういうつもりはなかったけどね)
(それを狙ってたのか?だとしたらアンタも酔狂な奴だ)
(まさか。でも酔狂なのは間違ってないよ。自覚してるから)
(君と再会するまであと5分)
(君は・・・俺を見てどんな反応をしてくれる?)
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これからよろしくお願いします。
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