第一章 07
第一章 07 BIG3.生徒会長
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弧篷先輩に聞いた慎吾さんが俺に言って欲しい言葉が三つある。
一つは名前。
呼ぶと頬が緩むとか。
二つ目は"大好き、好き"と言う言葉。
これを言うと顔が赤くなるらしい。
最後は…"〜は慎吾さんが初めて"
男はこの言葉を言われると弱いらしい。
まぁ、とりあえず慎吾さんと居て楽しい、嬉しいが伝わっていれば良いそうだ。
楽しいとか嬉しいとか感じたことなかったなぁ。
いつも、ヤられてるから……
いや、まぁ、嫌じゃないんだけどさ。
でもなんか毎日ヤられるってのも身が持たないっていうか、ヤられるだけじゃなくて、もっと慎吾さんの事が知りたいかな?
なんて事いったら"身体で教えてやるよ"とか言われそうで恐い。
今以上にヤられたら俺、痔になるよ。
いや、これガチだからね!
「敦、何してる。飯食いに行くぞ。」
俺を買ってからずっと一つ下の学年の授業を聞いている慎吾さんは、昼休みの時間になると退屈から解放されたかのように目が生き生きする。
今日はどんなセクハラされるのだろうか…
そんな不安を抱え、大勢が集う食堂へ。
凄い事に慎吾さんが入ると道が出来る。
こないだ弧篷先輩に聞いて知ったことなのだが、慎吾さんは学園BIG3に入る大物。生徒会、風紀、慎吾さん。"この人達に無闇に近づいてはいけない"というルールがあるらしく、破ったものはファンから制裁と言う名のイジメに合うらしい。俺も前に食らったやつがそうらしい。
「おい、敦、お前は何を食べる?」
慎吾さんの言葉に周囲に居た人がザワザワする。
あの出来事以来、イジメにあうことはなくなったが、陰口は今だに絶えない。
「貧乏人の癖に…」
慎吾さんに聞こえないようにボソッと呟く声が聞こえてくる為、毎回、慎吾さんと同じものが良いと言ってしまう。
まぁ、飼われてる…身だし、図々しいことは言ってはいけないって分かってるし。
あまり慎吾さんファンを刺激しないように遠慮がちに言ってしまうのは、いつものこと。
同じ食事が二つ運び込まれ、慎吾さんが食べるのを待つ。
「敦、食べないのか?」
そう聞かれた時にようやくご飯を口に運ぶ。
例え、苦手な食べ物が入っていたとしても"美味しいです"と言って食べる。
マズイと言って残しては、奢ってもらっている慎吾さんと作ってくれた人にも申し訳ない。
「敦、口開けろ。」
そう言って食べ物を与えてくる時も同じこと。
「お、美味しいですっ…!」
それが例え苦手な食べ物だって気づかれないように笑顔で食べる。
「食堂で賀来と遭遇するとは、最悪だな。」
声のする方を見ると、見たことのないイケメンが慎吾さんの座る隣に立って、慎吾さんを見下ろしている。
「それはこっちの台詞だ。生徒会長様の顔を見たあとの食事は不味くなる。」
二人から険悪なオーラが漂っていて、誰も近づこうとはしない。
こ、この場から立ち去りたい……
その一心でご飯をひたすら食べ続けていると、イケメンに声をかけられてしまう。
「おい、貧乏野郎。こんな奴に飼われるとは、お前糞共以下じゃないのか?」
あなたの言う糞共はどの人たちのことを言っているのでしょうか?俺は兎も角、慎吾さんを悪く言うのは何か嫌だな。
「何だ、そのツラは。貧乏野郎が俺様に盾突こうってか。はっ、笑わせるな。」
そして、一々ムカつく喋り方だ。
「敦、アーン。」
妙な空気をブチ破るかのように差し出されるスプーン。
「あ、あの…慎吾さん?」
「ほら、アーン。」
まんべんの笑みで差し出される御主人様のスプーン。これを拒めば後が怖い。そう思いイケメン会長を無視し、スプーンの上に乗っている食べ物を頬張る。
「美味しいか?」
さっきと同じように答えると満足したのか食事を再開する。
「貴様っ、自分の立場を分かってやっているのか!?」
「はぁ、生徒会長様自ら問題を起こそうとしては、学園の秩序が心配ですね。」
「なっ!!」
「学園内の生徒の代表なんですから、もっとしっかりして頂きたいものです。それでは、失礼します致します。敦、行くぞ。」
その場をさっさと立ち去る慎吾さんの後を追いかけ、食堂を出る。
「し、慎吾さんっ……!待ってくださいっ。」
歩く速度が早過ぎて、追いつこうにも追いつけない。
「慎吾さんっ……!」
待って、と言ってもスピードは衰えない。
「待って…慎吾さ…」
ダメだ。追いつけないし、疲れた。
よし、一旦休んで……って
「っーーーー!!」
背後から何者かに口を塞がれ、空部屋教室へと吸い込まれるように誘導される。
扉が閉まると同時に塞がれていた手が離される。
「ねぇねぇ、君、間中君デショ?」
背後に居る男の方へ振り向くと、ガタイの良いチャラチャラした男が立っていた。
「僕、慎ちゃんがいっつも食べてる子気になってたんだよねぇ」
慎ちゃんって誰?!
食べてるって何をっ??
って言うか、名前聞いといて話進めんなよっ!
「僕も食べてみたいなぁ…」
ん?顔近いんですが。え、ちょ、何でホールドされちゃってるの、俺。ってか、食べてるって…まさか……っ!?
「チョットだけ味見させてね♪」
俺、ピーンチ!!
慎吾さん……助けてっ!
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