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カップルのアレ事情


「あーもーつれぇぇ!!」
そう叫ぶのは友人の佐々木哉真都である。
机に項垂れ周りを気にせず大きな声でさっきから「辛い」と叫びたおしている。こんな状態を静める役をいつの間にか俺、泉 一哉の役割になっていた。

「どうした?哉真都」
「聞いてくれ、一哉!ふーやがさぁ…」

ふーやと言うのは俺の弟、泉 風夜。真面目で礼儀正しいが、人見知りの所があり余程親しい人しか話さない。哉真都の時だって慣れるまで半月かかった。それなりの理由はあるが、二人は学園内の公認のカップルである。こいつが弟の名を言う時は大抵、喧嘩して仲直りが出来ないという時だ。

「風夜がどうしたんだよ。」
「昨日、風夜の部屋でヤろうとしたら、怒って叩かれて追い出されたんだよ。なんでだと思う?」

俺は盛大な溜息をつく。
何故、こいつは恋人の実の兄にそんな相談できるのだろうか。知らされる俺の身にもなって欲しいものだ。

「知らねーよ、そんなこと。本人に聞け!」
「んなこと言うなって!風夜の兄だろ?」
「兄弟だからって以心伝心してると思うなよ。」
「俺と登緒真は以心伝心だぞ!」
「あ〜そうですか。俺にはわからないから他あたってくれ。」
「祐堵は放課後、弟と買い物行くって言ってたから頼れるのお前しかいねーんだって!」
「何で選択肢がふたつしかねーんだよ。登緒真や前橋が居るだろうが!」
「其の二人は風夜の方に付いてるからできねーし、今から相談することは登緒真にはぜってぇ言えねーの!!」

俺は再び盛大な溜息をつく。

「わかったよ、話聞いてやるから。」
「さっすが、一哉だな!」


___放課後
乗り気じゃない俺は校内のカフェテリアにて哉真登の相談事を聞いている。

「楽しくデートした後、良が暁人んとこ行ってるから風夜ん家寄ったんだ。もうさ、家上げた時点でオッケーしてるようなもんだろ?」
「なんでそうなるんだよ。」
「っかー!!わかってねーな。自分のテリトリーに入れるってことはそうなるんだよ。」
「ああ、そう。」
「んで、キスして押し倒した所でさ信じられないって顔して出てけって言うんだぜ?」

きっといつ帰って来るかわからない良を気にしたんだと思うんだけど。今のこいつに言っても解ってくれなさそうだな…

「あいつはもう俺の事愛してないのかな。はっ、もしかして、俺が余りにも求めてくるから呆れて他の男と…」
恋人の名前を叫び机にうつ伏せる目の前の友人。やれなかったぐらいでこうなる友人に恋人でなくても呆れる。

「……そうだ、一哉。あのさ…」
「断る。」
「まだ、なんも言ってねーだろ!?」
「だがしかし断る。」
「俺の今後のためにも協力してくれよ〜!」
「協力したらもうこんな相談事すんなよ?」
「何でだよ。」
「あのな、弟と友人の恋事情やらを聞かされる身にもなれよ。お前も登緒真の恋人からそんな話聞きたくねーだろ?」
「登緒真に恋人が居るなんてきーてねーぞ!」
「過程の話をしてんだよ!!」
「おう…、聞かされた暁にはそいつを殴り倒す。」
「だからこれを機に辞めることを誓ってくれたら協力してやるよ。」
「わかった。」



ー ー ー ー ー

哉真登の計画に協力することになった俺は、哉真登の指示通りに人気のない物小屋から離れた茂みに隠れることに。誰かが来たら人払いを頼むとの事。どうやって弟の風夜を呼び出すのか不明だが、どうせロクなことはない。不安な気持ちを抱えながら暫く待機していると、慌てた表情を浮かべた弟と哉真登の弟、登緒真物小屋へやって来て、戸をドンドン叩いて俺の名を呼んでいる。

「兄貴、居るなら返事して!」
「一哉、大丈夫?!」

どうやらあの2人は俺が物小屋に閉じ込められたと勘違いしているらしい。一体どういうことなのだろうか?
疑問に思っていると、タイミングよく哉真登からメールが届く。

from:佐々木 哉真登
to:泉 一哉
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登緒真の確保宜しく!

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メールを見終えた頃、2人の元に哉真登がやって来て何かを告げると、登緒真だけ此方の茂みに向って走ってくる。
俺は仕方なく指示通りに横を通り過ぎようとした登緒真を捕獲し、2人に声が聞こえないようもう少し離れた茂みへと隠れる。

「か、一哉?!どうしてここに?」
「それはかくかくしかじかで…」

困った表情を浮かべる登緒真だが、言いたくなさそうな雰囲気を読みとったのか違う話題を振る登緒真。
「そ、そう言えば哉真登と風夜はどうしてるのかな?」
「えっ?!あ…いや〜、さっきメールしたから帰ったと思う。」
「そっかぁ、よかった。まだ、一哉探していたらどうしようかと思ったよ。」

俺が閉じ込められたってのは初めから嘘だったからな。
閉じ込められたことを素直に信じている登緒真に良心を痛める。辺りは太陽が沈んで薄暗く、夕餉の時刻だ。

「もうすぐ、晩飯の時間だな。一緒に食堂行かね?俺、腹減ってさ。」
「うん!」



ー ー ー ー ー

翌日、昨日こってり叱られた哉真登と共に風夜に怒られるのだった。




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あきゅろす。
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