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You My first love


初めてこの学園に来た時、俺は迷子になった。

「どうしたの?迷っちゃったの?」
男の子は一瞬困った顔をしたが、笑顔で手を差し伸べる。その笑顔が余りにも眩しくて、未だにその子が忘れられない。





ーーーーー





あれから4年経ち高校2年の春を迎えようとしている。山奥にある全寮制の学園に満開の桜が咲き乱れ、新入学生は中学の制服から高校の制服へと衣替えし入学式を迎えた。外部からの入学生がいないため、あまり新鮮味がない。そんな光景を通り過ぎ、日向ぼっこをしようと裏庭へ向かう。まだ肌寒い風に吹かれ、日当たりのいい場所を探す。

そう言えば、あの子と出会ったのも桜が咲く季節だったなぁ。

桜を見上げ目をつぶる。あの時もこんな桜の木が立ち並んだ庭であの子と出会った。

あの子にもう一度会いたい……

多分、この学園には居るのだろうが、学校では一度もみたことがない。ましてや名前も学年もわからない。頼りになるのはあの子の笑顔だけ。

目を開け、前へ視線を向けると見知った人物が木下で読書をしていた。邪魔をしないようにそっと近づくと、俺に気づいたのか読んでいたページに栞を挟み、本を閉じて声をかけられる。

「どうしたの?迷子?」

思わず苦笑して「違う」と答え隣に座る。
互いに目の前の桜を眺めながら、他愛の無い話をする。こうしてまったりしながら話す事はあまりなく、凄く落ち着いた気分になる。

まぁ、こいつがおっとりしているからってのもあるけど。

まったりしていると携帯に友人からの着信が入る。電話に出ると耳が痛くなるくらいの声で「戻って来い」と怒鳴られてしまい、その場から立ち上がる。

「ごめんね、兄貴が。」

「いや、いつものことだよ。」
はぁ…と深いため息をつく。そいつにじゃあと言って手を降る。

「うん。」
そう言って初めて見る笑顔で手を振り返され、目を見開いた。




俺が忘れられなかったあの笑顔をしていたから。




何で気づかなかったんだろうか。それは友人の双子の弟だから?最近始めて知り合ったから?考え出したらキリが無い。とりあえず、動揺していることを相手に気づかれぬよう、手を振り返しその場を去る。


あの子を思い続けた4年目の春。
出逢えた喜びを噛み締め友人の元へ戻った。


The you that I thought that it is not able to meet, was close unexpectedly.
会えないと思っていた君は、案外近くにいた。




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