[携帯モード] [URL送信]
20
公園から走りさって数分、町全体を一望できる高台までやって来た。

「さっきの続き、ここで言うね。」
俺の手をとって、包むように両手で握りしめ強い眼差しで彼は俺にこう言った。

「いきなり付き合うとかじゃなくて、友達からでもいい。あの頃のようにまた悠ちゃんと一緒にいたい。」

真剣な眼差しで俺を見つめるその目は、昔、ジャングルジムの上で虹を見ていた時に友達になろう宣言した時の彼と一緒だった。

「俺もさーちゃんとまた仲良くなりたい。」

そう言うと嬉しそうに強く俺を抱きしめる。
ひたすら俺の名前を呼ぶ彼に応えるかのように優しく抱きしめる。

「おい、貴様。俺様のものに何してくれている。」

後ろから生徒会長様様の起こっているような声が聞こえてきた。顔を見ていないからどうなのか分からないけど、でも多分青筋を立てるくらい起こっているのだと思う。と言うか、振り返るのが怖いので、朔君元いさーちゃんにしがみつく。

「そんな怖い声で言うから悠斗が怖がってるじゃねーか。Berserkの総長…いや、生徒会長と呼んだ方が良いのかな?」
「ほう。その声はやっぱり貴様がTirannyの総長だったか、和田原朔。」
「今頃気づいたんだ。普通、初見でおかしな奴とか思わないわけ?」
「生憎、俺様のチームはそんな細けぇところなんか見やしねぇよ。」
「あっそう。ま、でも感謝するよ。おかげで悠斗と会うことができたからね。」
「貴様に篠原は渡さねーよ。」
「俺もお前に譲るつもりは一切ないね。」

見えないところ、いや俺の後ろで野郎二人がが野郎を取り合う。なんという光景なんだろうか。

「おい、篠原。俺様と一緒に来い。」
「何言ってんの。今、悠斗は俺とデートしてるの。邪魔しないでくれる?」
「貴様こそ、門限はとっくに過ぎている。」
「夜中に仲間と集まって遊んでるお前に、門限とか言われたくねー。」
「貴様も同じだろうが!!」
「やだやだ、これだから単細胞は。」
「あ?何言っている、俺様は天才肌だ。」
「意味わかんないんですけど。」

会話を聞いているだけだと、なんかこの二人凄く仲良さそうに聞こえるのは俺だけでしょうか?あれなのかな、族と言っても暴力のない口喧嘩が得意な人達が集まってるのだろうか?
とりあえず、このまま口喧嘩が長引くのは面倒だ。

「あの〜一先ず、そのことは帰ってから話し合いしませんか?」
「えっ、もう帰っちゃうの?俺まだ悠斗と二人でいたい。」
「おい貴様、門限だと言っているだろう。」

抱きしめられているのを解いて、朔君と見つめ合う形になる。

「俺とさーちゃんは友達でしょ?明日も会えるんだからお出かけは此処でお開きにしよう。だから一緒に帰ろ?」

ね?と言うと渋々頷いてくれた。

「会長も帰りましょう。」
「あ、ああ。」

その後は会長に車を呼んでもらい学園へ帰ることに。
後部座席に俺を挟んで三人で座り、二人は相変わらず睨み合って終始口喧嘩をするもんだから大変だった。
学園へ着くと先に帰っていたのであろう会計と副会長と書記がお出迎えに来て、朔君にべた惚れだった副会長はかなりのショックを受け、会長と朔君の口喧嘩を聞いて会計が「これから楽しくなりそうだねぇ〜」と呑気に言うのに対し、書記はそれに頷く。
面倒くさくなった俺はこっそりと寮へ戻り、明日の無事を願って眠りについた。



≪backnext≫

21/22ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!