[携帯モード] [URL送信]
初めてのお友達
俺と哉真登は双子の兄弟。
顔は似てるけど性格は違う。哉真登はやんちゃで人気者だが、俺は大人しくて人付き合いが苦手。
いつも哉真登を見ると羨ましく思う。
俺が困っていたら哉真登は助けてくれる。けれど、逆に顰蹙を買うことが多く、虐められることが耐えなかった。


「お前はそんなに俺と話すのが嫌か?」

「つか、本当に哉真登の双子なのかよ。顔だけ似てるだけで、他に何もねーじゃん!」

話すのが嫌なわけではないが、話すことはあまり得意じゃない。本当に俺にはいいところがない。だから、2人の言っていることに言い返す言葉も出てこない。


「黙っているっていうことは、事実何だよな。そっくりさんよ?」

そっくりさんとは俺のこと。
顔が似ているだけのそっくりさん。

「だから、言い返せないんだよな〜。なんにも取り柄がないんだからよ。あるとしたら、眼鏡だけっ!」


ケラケラと笑う同い年の男の子2人組。
俺はただ、黙って俯くしかなかった。
これが次第にいじめがエスカレートするとも思わないで。









「とーま、とーま!今日も可愛い俺の弟♪」
いつもと変わらない、哉真登のスキンシップ。


「哉真登、お早う。今日も元気いっぱいだね。」


「登緒真がいればいつでも元気いっぱいだぜ!

ニッと笑って言う哉真登の言葉に微笑む。


「......とーま、なんて可愛いんだー!!」
ガバッと思いっきり抱きついてくる。


「くっ、苦しいよ〜哉真登。離して.....」


「ごめんごめん!じゃあ、一緒に学校行こう。」
手を差し伸べて来る哉真登の手を握り登校。
すれ違う人みんなこちらを見ながら歩いている。
毎度ながら恥ずかしい。
けれど、ニコニコしてる哉真登をみれば仕方がないと思ってしまう。

「哉真登、す、少しペース落として」
人の話も聞かずルンルンしている哉真登に溜息をつく。
今日も親衛隊に文句言われるんだろうな、とか考えながら。







教室に入る途端睨まれる。
哉真登親衛隊のいきなりのお出まし。
小学生の頃にはなかったが、中学に入ってしばらくして出来た。容姿、性格が皆に好かれていると自然に出来る。同い年だけでも3人いて、哉真登はその中の一人。
例え兄弟でも、親衛隊達が釣り合わないと思えば、いじめに合う。
そして、俺は釣り合わないと判断されいじめを受けているという結果に。
だから、俺の机には"死ね""ブサ男"といった落書きが書かれていて、引き出しには教科書が入れられない程に汚い。
何度も綺麗にしても繰り返しやられるので、諦めた。
けど、椅子は綺麗にしないと座れないので、鞄の中に常備してあった雑巾で綺麗に拭き取る。


(親衛隊の人たち毎朝こんな作業して疲れないかな?朝、上靴の底に綺麗に画びょうで"しね"って書いてあったし…)
最近、いじめる側は毎朝の作業が少し大変だなとか考える俺は可笑しいなと思う。
慣れとは恐ろしい。







昼休み、俺は図書室へ向かう。
唯一親衛隊に会わない場所。
理由は怖いで有名な同い年の前橋 壱君がいて、
キャーキャー騒げば、関西弁でキツく叱られる。
あの時は凄くビックリした。
物静かで大人っぽいと評判の彼から
あんな暴言を吐くなんて誰も思わなかったと思う。

一時期はキャーとさわがれていたが、彼が「うっとおしい」と放ったため、なくなった。





読みたかった本が返却棚にある。
これを借りたいけれど、借りるには彼に聞かなくてはならない。
ーと唸ってたら声をかけられた。

「なぁ、そこに何か借りたいのあるん?」
突然のことでびっくりして声が出ない。

「………あるんやったら、こっち持って来ぃ。」
そんな俺を見て優しい口調で彼は言う。
借りたい本を持って彼の前に行く。


「お願い…します。」
本の裏に二回ほど作業をしてこちらに差し出す。

「ほい、出来たで。」

「あ、ありがとうございます。」
本を受け取りいつも座っている場所で本を読む。
その光景をジッと見つめられていたとは気づかずに。



本を読んでしばらくして向かいの席に誰かが座るのを感じた。
珍しいな、とか思いながら本に意識を戻す。


「なぁ、あんたいつもここで本読んでるよなぁ。」

声の聞こえる方を見る。その人は先ほど本を貸してくれた前橋 壱君だ。俺の返事を待っている。


「…………えと、ここが一番安らげる場所だから。」

ふーんと言って俺をジッと見る。
俺が何かしたのか不安になる。

「そんな怖がらんでええやん。俺はただ、聞きたいこと聞いただけやし。」
彼は困った顔をしていう。

「それに、あんたと友達になりたいんやけど、どぉ?」


意外な事を言われたので驚いた。
だって、俺と友達になりたいって初めて言われた。



「そんな驚かんでええやん。ただ、仲良ぉしたいねん!あ、ヤマシイ事やないで!友人として仲良ぉなりたいだけやねん!」

初めて見る彼の表情に思わず頬が緩む。


「よろしくお願いします。」

「おう!よろしくな!」


こうして初めてのお友達が出来た。





≪backnext≫

4/8ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!