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親衛隊隊長の苦難 24
今日の分の仕事を終え、生徒会室をでてからすごく大変だった。
副会長の放送後、ずっと扉の前で数十人の生徒が、豹変した会長を一目見ようと群がっていたが、会長の姿を見るなり床に倒れた。
そのあとすれ違う人皆、えげつない量の鼻血を出している者や、倒れる者が絶えなかった。中には風紀委員長がやって来て、会長に襲いかかろうとしたが、回し蹴りを喰らい、床へダイブするように倒れた。

今日の食事会の事でまた集まるので、途中、会長と別れた。離れの講堂に向かうと、親衛隊の子達に今日の放送の理由を聞かれ、やや困った。

理由が風紀の人に言われたからって言ってしまえば、風紀の親衛隊に喧嘩売りそうだし…

適当に場を誤魔化し、昼に言っていた順番を決めた。皆に"油断していると危ないからね"と注意をし、解散する。

寮に戻って、食事会が始まる5分前まで、苦手な教科の数学を教えてもらった。


「続きは夕飯後にしよう。……そう言えば、副隊長とは連絡ついたのか?」

「いえ……」

「そうか。1人じゃ大変だと思うが、フォロー頼む。」

「はい。」

部屋を出て、親衛隊の子達に食堂の指定した席に向かうが、いつもより奇声ものすごくて耳がキーンとする。

「会長様wwちー、こっちだよww」

相変わらずのテンションでこっちだよと手招きをされる。真智とは裏腹に、緊張で固まる親衛隊の子達が数人。

「待たせたな。」

「じゃあw初めに今日のメンバーの自己紹介がってら、食事しませんか?ww」

腐男子の言葉に皆同意し、各々注文し自己紹介を交えた会話を始める。

まぁ、時々「今夜、空いていますか?」と、モジモジしながら勇気を振り絞って言ってくる子を会長は華麗にスルーしていた。
それを見ていた腐男子は「ぶぅwww」と声に漏らし、言った本人は少し残念そうにしていた。

順調にいっていた矢先、運悪く変態トリオと副会長が食堂に入って来て、辺りが騒がしくなった。

「うはwwwナニか起こりそうな予感w」

そんな腐男子の言葉に一睨みする。
んなこと言ったら、起こるだろ?!

隣にいる会長は、何事もなかったかのように食事をしている。
俺も会長を見習って、騒ぎに目を背けて食事を再開するが

「あー!!千裕と大雅、一緒に食べようって約束したじゃんか!!」

してもいない約束を勝手にほざきながら、こちらの席へ向かうモッサリとその他。


「何々〜?お食事会ちゅう?」
チャラ男が首に巻きついてくる。

「離れてください。親睦を深める食事会の邪魔をしないでください。」

「じゃあ、僕の仲も深めようよぉ〜」

「それは会計様の親衛隊の皆様に言ってください。」

「大丈夫だよぉ。僕は親衛隊の子達とは仲がイイから、ねっ?」

ねっ?と言われてもな。

「何を言っているのですか?これは大雅…会長の親衛隊です。会計の貴方がここに混ざっては、他のものに示しがつきません。」

おお、流石副会長。

「ちぇっ、仕方ない。やなやな、僕達は虚しく二階席でご飯食べよぉ〜」

「分かった……けど、明日は一緒に食べようなっ!約束だぞ!!」

それは無理な相談だ。

モッサリとチャラ男と副会長は二階席へとむかったが、何故か書記の三鷹さんだけが残って、真智をじっと見ている。

「なで、しえ…たい……やって、る?」
俺にした質問を問いかけている三鷹さんに対して真智は、見たことのない艶やかな笑みを浮かべ、三鷹さんにしか聞こえない声で耳元で囁く。

その後の三鷹さんはカァと顔を赤くして、片耳を手で押さえて二階席へと行ってしまった。

「お前……今の顔を鏡で見てこい。」

「どうしてですか?ww」

「それは周りの反応を見てから言え。」

間抜けな顔している真智と一緒に周りを見渡せば、いつの間にか注目されていた俺たち……いや、会長がいた時点で注目されていたな。

「なに言ってんすか?wwwこれは会長がいるからでしょww」

「なに言っている。これは普段とは違い、不気味に笑う貴様が珍しいからだろう?」

「ちょwww不気味って失礼ですよw俺はいつも通りでしたよwwね、隊長w」

おまっ、ここで俺に振るなよ。

「高梨達もそう思っただろう?不気味だと。」

苦笑いして答える俺とは別に、親衛隊の子達は「艶やかでした。」と素直な意見に真智は

「えっ?w何それニヤけてたの?ww恥ずかしィwww」

と両手で顔を隠している。
今更、隠しても無駄だと思うのだが…

「おやw隊長、お時間ですよww」

真智に言われ時計を確認すると、予定していた時刻を少し過ぎていた。

「そうですね、 会長最後に一言お願いします。」


「今日は楽しかった。また、機会があればみんなで食事しよう。」

そう告げて席を立つ会長に続けて俺と真智もその後をついついく。

「真智、明日も頼む。」

「あいよwwそれじゃ後はごゆっくりお楽しみくださいwww」

何をだ。

「何って顔しないのwナニだよwww」

「はぁ…馬鹿な事言ってないでお前はさっさと寝て休め。」

会長はポケットから何かを取り出し、真智のおでこにペタッと貼り付ける。

「高梨、馬鹿は放って行くぞ。」

「あ……はいっ。」

慌てて会長の背中を追いかけながらチラッと真智を見る。どうやらおでこには熱さまシートを貼られていたみたいで、シートを押さえるかのように手を被せ、複雑そうな顔をした真智が会長を見ていた。


あいつ……しんどかったのか…
いつも通りに接していたから気づかなかった。


顔を俯かせていると、ポンっと頭に会長の手が優しく乗っかる。その手が温かくて気持ちがほころんでいった。



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あきゅろす。
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