飯も食ったし本題を切り出す。 「悠斗はどっか行きたいところとかない?」 目の前の思い人に聞いてみるが、特にないと素っ気なくけえされてしまった。 いやいや、まだ俺はここで挫けない! 「テーマパークとかじゃなくてもいいんだ。素直に悠斗が行きたいところってない?」 そう言うと、うーんと悩む悠斗が可愛くて、思わず顔がにやける。この後、悠斗が上目遣いで遠慮がちに言ってくる姿を想像したら、ね……? あ、やべっ。下半身が大変なことになってる。平常心を装って、何かを伝えようとする悠斗をじっと見つめる。 「……え、と、街を見渡せる高台とか…ですかね?」 「高台?」 そう言えば昔、よくジャングルジムとか高い場所に座って、空を眺めるの好きだったよなぁ……… あの頃とあまり変わらない姿に頬が緩む。 「うん、いいね高台。周り誰もいないから悠斗口説き放題!」 「な、何、言ってるんですかっ!」 プイッと顔を背けて頬を赤く染める。 今にも恥ずかしそうに俯く顔を上げてキスしたいのを堪え、冗談だよと伝える。 まぁ、冗談じゃないけど。 「高台は最後に回るとして…初めは俺と悠斗の思い出の場所巡りに行こうと思うんだけど、どう?」 チラッと悠斗を見る。 「…いいですけど、一ついいですか?」 聞きたいことは多分… 「そこに行けば、ダンスパーティーで言っていたことが分かるのですか?」 まだ、俺が誰なのか思い出せない悠斗は戸惑っている。正直、俺も思い出してくれないとシンドイ。好きな人が自分の事を忘れてるのって辛いし。 「そうだよ。」 真剣な表情で真っ直ぐ悠斗を見る。 「…それはいつ、行くんですか?」 「明日。」 「明日って…学校は?」 「勿論、サボる。」 思ってもいない結構日に驚きが隠せない悠斗。別に休日でもいいけど、Tyrannyの奴ら最近コソコソと嗅ぎ回ってるから、後付けて来られたらたまんねーし。 「サボるって…許可下りないんじゃ……」 「大丈夫、おじ…理事長には話は付けてある!」 ついでに和田原 朔がBerserkの総長と悟られないよう、理事長に根回ししてもらってるし。 「えっ?!ちょ、どういうこ…」 「じゃあ、明日、皆が登校した後にメールで指定した場所に来て。」 やや半ば強引にメアド交換。 悠斗も渋々だが、同意してくれた。 「はぁ…それでは俺は帰ります。夕飯、ありがとうございました。」 「え、もう帰っちゃうの?!」 貸した本を持って、御暇する悠斗に寂しさを覚える。 「はい、課題しないといけないので。」 「そっか……じゃあ、また明日。」 「おやすみなさい。」 バタンと閉まるドアを暫く眺める。 もう少し一緒に居たかったけれど、俺も明日に向けて色々しなければならない。 其の為に真夜中に学園を抜け出し、久しぶりにBerserkのメンバーを集めて集会を開いた。 早く俺のことを思い出して…… あの頃みたいに一緒に過ごそうね、悠斗。 ≪backnext≫ |