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「―――帰ってこねーなぁ………。」
別に今さら誕生日なんか特別でもねーし、誰かに祝ってほしいわけでもねー。
だけど。
オレの誕生日としての14日より、バレンタインデーなんてのを優先されっと、話は別だ。オレ自身を否定されたみてーで面白くねぇっ。
イラつきを納めようと煙草をくわえた途端、携帯から聞き慣れた着信音が流れてきた。
「‥‥サービス‥‥?」
携帯の向こうから、これまた聞き慣れた、――幼い頃には毎日のように聞いていた、声。
『誕生日おめでとう。』
「お前も、な。」
『‥‥どうかしたかい?』
「‥‥別に。」
『落ち込むことないだろ?‥僕と違って祝ってくれる相手がいなくて寂しいのはわかるけど。』
「っ!!!!相手くらい‥‥っ。」
‥‥‥‥先程出ていって帰ってきません。
『あはは、いるんだ?じゃあ、もしかしてお邪魔かい?』
可愛い弟のからかうような声に混じって聞こえてくる、別の誰かの脳天気な鼻歌に逆に揶揄を込めて返してやる。
「オレが邪魔してンだろ?‥‥ジャンの拗ねた面が目に浮かぶぜ?」
『今、"待て"の最中だから、別にかまわないさ』
「‥‥‥馬鹿犬に噛まれたくねぇから切るぜ。…じゃあな。」
やや強引に通話を切り、小さく息をつく。
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