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―先生side―
後ろで夏目の監視の目が光る中。
何とも慈悲深く心の広い『きゅーと』で『びゅーちふる』な私は、例の二人へと順調に歩みを進めて行った。
その距離が次第に縮まるにつれて話の内容も自然と耳に入ってくる。
ここでは私は単なる愛らしい猫だ。
どんなに近付いたところで、このように可愛いニャンコを追い払う者などおらんだろう。フフン…私は盗み聞きには持って来いの存在という訳だな(えっへん)
「・・・―ねがいですっ」
何やら頼みごとをしているようだな…
私はもっと聞こえるよう二人に近付く。
「お願いです!私をあなた様の側に置いて下さいませ…お願いです!」
ぬぬ…?
私の聞き間違いか、幻聴か…
こやつ今なんと言った。側に…置け?
「私は……私は……」
予想外の内容に思考が止まってしまった。
そんな私を余所に、奴は必死に相手へと訴えかけている。・・・・・何だコイツは。
ふと、それまでは別に気にもならなかった事なのだが…このまま近付いて行けば、下からあの人間の顔が見えるのではないだろうか?と思った。
思うと今度は見たくなる!
私は歩く速度をそのままに、奴らのすぐ近くにまで歩み寄った。すると流石に気付いたのであろう、犬の妖は私を見るなり『あ』と小さく声を上げた。
(フフンッ…流石は巷で大人気の私だ)
隣町にまでその名が知れ渡っておるとは…
やはり寄り代の姿であっても、元より体に染み付いた高貴さは隠せないもの――。
「たぬきだ」
「Σ!!?」
ぐ、ぬぬ…!!こやつ…っ!!
声を出さずに耐えた私に拍手喝采だ!!
妖の姿は見えずとも、寄り代である猫姿の私では話が別だ…姿は完全に見えているだろうし、声を出そうものなら近くに居る他の人間達にもバレてしまう。
偉いぞ私。団子1本追加だ!!
フルフルと怒りに震える私は、さっきまで無かったであろう視線に気付き反射的にそちらを見上げた……
何ともなしに上げた視線の先。
――視界に入って来たのは、赤だった。
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