プロローグ side:T 梅雨入り前の蒸し暑い日。 昼食を終えた、ガヤガヤとした教室。 あぁ……… 「………て、……きなんじゃねぇの?」 「え、マジでぇ」 「……………、ちが……」 「アレ……ちゃん、真っ赤!」 「ヤッパ、図星じゃね。」 ああ、これは夢だ。 そう思うのに自分の望むように進められなくて、すごく歯がゆい。 これは記憶。 自分の中でいまだ過去には出来ない苦い思い出。 ギャハハと、笑う友人達。 その先は、言っちゃダメだ。 分かってるのに。 すべてが終わってしまう。 ほら−−が不安そうに見ているじゃないか。 笑ってやればいい。 卑下たものじゃなく、昔からの笑顔で。 何でもない、事じゃないか。 なのに俺は…………。 「…………・・ッ。」 ……………………………っ! どうして……………!! 大して暑くもないのに目覚めると汗びっしょりだった。 はぁ、と溜息を深く落とした。 いつもここで終わる夢。 どうせ変えられないのだから、もう見たくないのに。 もしタイムマシーンがあったなら絶対に行きたい時がある。 そして止めたい。 あの言葉だけは言わないように。 そうすればきっと違う未来があったはず。 あの頃と同じように隣には君がいただろう。 あの優しい人を和ませる笑顔で。 無意味な願いだとは分かっていても、そう思わずにはいられない。 悔やんでも悔やみきれない。 それでも、時間は残酷にも過ぎていく。 君との時間はどんどん離れて行って………。 そうしてまた一人の、一日が始まる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |