E side:拓実 綾だ。 チラッと見た横顔にピンときた。 常識とか途端に吹っ飛んで追い掛けていた。 腕を掴んで声を掛けると違うと否定される。 途端に崩れる確信。 でも面影がある。 でも他人の空似……キッパリ言い切られるとそうかとも思った。 性格もずいぶん違うような気もするし言葉遣いも「俺」と自分を呼ぶのも、知っていた彼とは全然違った。 でも、でも、でも! 否定してはそれを否定して、またさらに否定する。 綾とクラスメートだったのは中2までだ。 顔ははっきり覚えているとはいえ、成長期真っ只中に会えなくなった。 だから成長後の彼を知らない。 それどころか………水上綾はすでに亡くなっている。 本当は成長すらしない。 本来ならこうして会える訳がない存在。 俺だけがいまだに信じていないだけで、役所の記録もクラスメートたちの認識でも綾はすでに故人。 昔からの知り合いが見たら、俺の正気を疑うかもしれない。 だけど………。 [*前へ][次へ#] [戻る] |