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校門を出てしばらく歩いていると初めはぞろぞろしていた野次馬も、だんだん付いてくる人がいなくなった。

小さなコンビニの駐車場に停めてあった海斗の車のシートに体をうずめて目を閉じる。

疲れた。

今日は朝からすでに疲れていたのに、トドメがあれだったなんて。
限界を感じる。

脇から腕がぬっと伸びてシートベルトをされるのをただ黙って感じていた。
「あ、もう。祐はいつもシートベルトしないよね。
 捕まって罰金払うのも、点数引かれるのも俺なんだからさぁ。」
「海斗さん、迎えに来てくれたのは嬉しいんですけどせめて帽子とかグラサンとかしてきて下さいよ。」
「スルーだし。
 てか、なんで?」
「もう……自分の人気自覚して下さい。
 さっきみたいに囲まれるの嫌いなんですよ。
 今度したら、無視しますからね。」
「祐、性格ちがくない?
 さっきは縋るみたいにして可愛かったのにさぁ。」
「………………………さっきは……」
余裕が無かったのだ。
縋りたくもなる。

「さっき俺を睨んでた奴がいたけど……、祐の機嫌が悪いのってあいつのせい?」
睨んだのだろうか。
俺には驚いていたとしか思えないが。
だが目敏い、と思う。
シートベルトを締めたままの、まるで覆い被さるような体勢。
外から見たら、イチャついているように見えるかもしれないな、と頭の隅で思う。
まぁ男同士だが。
「サークルの勧誘、しつこくて。」
実際、顔が近い。
少し動くと、唇が触れてしまいそうだ。
「サークル?
 入ればいいのに。サークルって大学生ならではって感じで楽しそうじゃん。
 俺、経験無いからそういうの憧れる。」
楽しそうな声に薄目を開けて見る。
声音と同じ、やはり楽しそうな瞳と出会う。
「遊びにきてるんじゃないんですよ。」
「もう、祐はバカ真面目なんだから。
 四年しかないんだから楽しまないとさ。」
くすくす、と笑いながら海斗はちゅっと音を立てた。
「この車スモーク掛かってないのに……見られてもいいんですか?」
海斗は鼻の頭にキスをしたのだ。
そう言う祐介も大して驚く風でもなく、嫌がるでもなく静かに海斗を見つめ返すだけ。


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