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思惑

side 兄

六つ年の離れた弟がとても可愛かった。
両親はそれぞれ仕事を抱え世界中を飛び回っているような人たちだから、実質二人家族のような感覚だった。
通いのお手伝いさんが家事を見てくれて、弟の面倒を統べてみていた。
ミルクも飲ませたし、オムツも替えた。
ベビーシッターや保育所の手は借りたけど、弟は俺が育てた、そう自負している。
だから部活にも所属せず、内申に有利だと進められた生徒会にも入らなかった。
その生活になんの不満もなかった。
内申などに頼らなくてもこの辺りで一番の進学校に合格する自信はあったから。
それなりの努力もしていたから高校には主席合格出来た。

奴と出会ったのは高校二年のゴールデンウイーク前。
家の都合でわざわざ転校してきたらしい。
思わず見惚れてしまうような美形。
でも、自分には関係ないと思っていた。
だが話してみると不思議と気があってすぐに仲良くなった。
しかし、それはあくまで校内での事。
他の連中のように、部活もしないでましてや街に遊びに行くでも、予備校に通うわけでもないのに放課後いそいそと帰る俺に、ふと理由を聞いてきた。
家庭の事情を隠していたわけではないから素直に言うと、「ならお前んちで遊ぼう」と提案してきたのだ。
個人宅で何して遊ぶのか……なんて思いながらも了承すると奴は嬉しそうについてきた。

家には六年生になったばかりの可愛い弟。
大人しくて引っ込み思案の弟はあまり外では遊ばない。
もしかしたら友達も少ないのかもしれない。
親同然の俺としては気になるが、深く追求はしたことがない。
イジメの対象にさえなってなければいいか、それくらいの認識。
少なくとも暴力的なイジメがないのは時々抜き打ちで一緒に風呂に入っているから確かだと思う。
寄り道せずに帰ってくるから大抵弟が先に帰宅している。

その日もいつものように帰宅するとちょうどリビングに弟がいた。
用意しておいたおやつを食べるところだったらしい。



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あきゅろす。
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