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静かに教えてくれたのはもちろん、和音だ。

「え?」

「強いストレスを感じたりすると、時として白髪になっちゃうこともあるんだって。」

若白髪なんてものじゃない。
全体が、全部の髪が真っ白になっていた。
まるで老人のような。

「ストレスって………」
小さく呟くと和音もきっと同じことを思ったのだろう。

俺たちは幼い春生に与えたストレス。

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 この3年、ハルがどうしてたのかまだ詳しくは分かってないから。」

和音は悲しそうにはにかんだ。
医師によると時たま強いストレスによって一晩で総白髪になってしまうこともあるらしい。
マリーアントワネットがそうであったように。
だが春生に何があったのかは、まだ分からない。
事情聴取が出来ないのだ。

「お客さん?」
また春生が訳のわからない事を言う。
「違うよ。」
そしてまた、和音が否定する。
「お客さんって?」
「うん、少し外に出ようか。
 ハル、ジュース買ってきてあげるから待ってて。」
「じゅーす? ふぇらする?」
「フェ……え?」
「健人、ちゃんと話から。
ハル、ううん、もう何もしなくてもいいんだよ。
 何もしなくても食べ物も飲み物もあげるから。
 待ってて。少し寝ているといいよ。」
和音は優しい声音で諭すように言い含めて、春生を寝かせると布団をかけてやった。
ぽんぽんと布団の上から軽く叩いてから、俺を促して、表の制服警官に頭を下げる。
和音が連れ出したのは談話室のような場所。
テーブルが幾つかあって、大画面のテレビや自動販売機がある。その奥には給湯室への扉があった。
CMでよく見る缶コーヒーを二本買って取り敢えず座るよう促された。

俺は早く話を聞きたくて道連れのように和音の手首を掴んで隣に座らせた。
困ったように口元を笑ませて缶コーヒーを一つ俺のように寄越す。

「それで……」
「うん。健人さぁ、1ヶ月くらい前に風俗が摘発されたニュースって知ってるかな?」
「風俗の摘発?
うーん、いや、……知ってるような知らないような………
どんな…ニュース?」
日々様々な内容のニュースが飛び交いその時取りざたされても、時が経つとマスコミも騒がなくなる。
自分には無関係のような事件事故はすぐ忘れてしまう。
1ヶ月前の事件なんて全く覚えていなかった。




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