B
勿論親友としてではなく。
恋愛感情という意味で。
自惚れなんかじゃない。
情事に囁かれる愛の言葉。
嬌声を上げながら、潤んだ目で見つめられ中で締められながら言われるのだ。
『好き、大好き……』
そして、
『愛し……て』
と。
本人はきっと無意識だったのだろう。
だから俺は、最低だから気づかない振りをした。
目を瞑ると、あの子に言われた気になるから。
あんなに甘ったるい欲に濡れた声で。
『あぁ、愛してやる。愛してる、俺も…………
ハル』
俺は兄を抱きながら弟の名を何度も何度も呟いた。
その度に正気に戻るのだろう。
苦しそうに歪む眉を、口元を何度も見た。
それも、気付かないフリをした。
兄の方もどれだけ傷つけたか……、分かるなんて軽々しくは言えない。
だが、利用すると、奴も承知していたから。
甘えた。
いつか罰はまとめて受ける、と。
このまま何も変わらないまま、せめてあの子が高校生になるまで……
何度も願っていた。
祈るように。
だが、やはりそれは許されないことだった。
世の中、そんなに甘くない。
2人で帰るところを見られるくらいならどうってことない。
俺たちは“親友”なんだから。
いや、せめて部屋でしていたら……
帰ってきたのに気付けたら。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!