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その幽霊、葬送。


奪わせない。








 「…っ…痛」


 Tシャツの中をまさぐっていた手をとめて血色の悪い驚いた顔で俺を見る。途端酷い耳鳴りと頭痛がしてくらくら。頭ん中にいろんな念が流れ込んできて頭が破れそうになる。くらくら。くらくら。



 「部長!」
 「っ桜、わりぃんだけど塩盛ってくんね?こいつ念強くて」

 暴れ出したソレに殴られかけたとこで部屋の外でドアの開く音と焦った桜の声が聞こえた。部屋に入ってきた桜に頼んで四隅へ塩を盛らせると空気が格段に澄んだのがわかる(今回は準備が悪すぎたな…)札の効果でソレの動きも鈍ってて押さえつけると、耳元で静かに経を唱えた。

 途端、苦しげに震えて唸り出すソレ。しまの意思とは関係ないであろう涙がシーツに落ちる。俺もそんなしまを見てるのが苦しくて苦しくて無意識に涙みたいなのが溢れた。震えがだんだん大きくなってカタカタカタカタと奥歯のぶつかる音。


 「!」
 「…っ」

 まだまだかかりそうだな…って思ってたときに、ソレが突然バッと顔を上げた。



 「だー!!ごにょごにょごにょごにょうっさいっちゅーねん!!言いたいことあるんやったらはっきりいったらどうなん?!ええ加減にしぃや淫乱ユーレイ!!!」



 頭を抱えてそう叫んでこっちがびびって思わずぽかーん(何、)月島…?(え、なんで?)霊魂がしまから同時に飛び出して自分の目を疑った。ちなみに視力はいい方だ。
 ……まだ徐霊終わってないのに戻って来れるわけないはず、ふつうは。


 (夢だ。夢に決まって……)


 「あー!またミチに化けたって無駄やねんで!」
 「し、しま?!はあ?なにゆって…っ有り得ねーお前!!」
 「霊感も何もないのに自力で霊を中から追い出しちゃうなんて…っ。すげーっすよ月島先輩!」
 「な…っはあ?は、ミチ…本物?とさくらくん??あれ、偽ミチは?」
 「偽…?俺は正真正銘本物の月路様ですが。って、まてコラそこのゲイ霊」


 しまから飛び出てやっと実体を明かした色情霊が何とか結界から逃げだそうとしてやがって(いや絶対無理なんだけど)、とりあえずもうしまに入れねーように手首を結んでた数珠をしまの首にかけると聖水入ったペットボトル片手ににっこり微笑んでやる。




 「…なあ、俺とイイコトしよっか?」




 聖水を口に含んでから色情霊に口付けて中に無理矢理流し込んでやると(あんまり嫌がらなかった辺りやっぱこいつゲイだ…)、トドメ。

 経の最後の方を耳元で唱えた。


 (――…強制葬還完了、か)








 一気に気が抜けたのと疲れがドッときたのでふらふらベッドの上に戻りながら桜に玄関の札と盛り塩の片付けを頼んだ(今回はちょっと危なかったな、ちょっと)でもよかった、無事で。元気そうだし。


 「ミチ、大丈夫なん?」
 「…疲れた」


 小さく呟いて月島に正面からぎゅーっと抱きついてぐったりもたれかかった。やっぱりしまは温かくて、やけに安心しちゃってそのまま寝落ちそうになる。

 「え、ミチー?」

 「…………」

 「月路さーん?」

 「…………」





 「……無視かい。さくらくんコイツどうしたん?」
 「部長今回の結構こたえたみたいっすよー?泣いてたし。先輩の為にかなりがんばってましたから」
 「…桜うるさい」

 桜が余計なことゆったせいでシマがにやにやしながらふーんだのへぇーだのゆってきて「なんだよ…」って毒吐いたらにこーっと笑って「なんでもあらへーん」って強く抱き返してきた(うぜぇ…)


 「やっぱミチが1番かわえーな!」


 (お前も徐霊してやろうか!)


























 「ごめんなさい、オレ…言えなくて」

 依頼主に連絡いれてまた直接会ってみると昼見たときとは別人で普通のジャニ系の男の子やった。やっぱり幽霊に毎晩掘られとるなんてゆえへんかったみたいで、わざわざ女装しとったんやと(まあしゃあないわな…)さくらくんが「こころ先輩がゆってた通りだ…」ゆうて隣でぽかーんとしとって苦笑。さくらくんにもちゃんと助けてもらったお礼せんとな。

 「これ、約束のお金です。ありがとうございました」
 「おおきに〜!」
 「あの、これ、もし次何かあったときにどうぞ。折って持ち歩くのもお守りになっていいっすよ」
 「お札…?」

 さくらくんがお札を手渡すと依頼主は礼をいってそれを受け取った。今回いくら依頼主が性別を隠とったせいでヤバイ目にあったとはいえ、本人はめっちゃ申し訳なさそうに謝ってきとるわけやし怒るつもりはあらへん。ミチはこの報酬の金額次第でキレそうやけど(笑顔でキレそうやんな笑顔で)
 そのミチなんやけどあのまま疲れて寝てもうて、今は俺の背中におる(誰かおぶさるなんてどれくらいぶりやろ)俺をぎゅってしたまんますやすや寝とってめっちゃかわええの。このままうち連れて帰ろ思います〜☆お持ち帰りや☆

 「背中の人は大丈夫なんですか…?」
 「ああ、大丈夫大丈夫。疲れて寝てもうてるだけやから。ほな、俺らはこれで失礼しますー」

 ミチをおぶさったまま踵を返して歩き出すと途中まで一緒に帰るゆうて原チャリ押してさくらくんが追いかけてきた(後輩がおるってゆうのもええもんやな)


 …とりあえず、


 (月組、初仕事終了や!)











 明日はミチに何してもらいましょう(ほら、俺の好きなことするゆう約束!)


 「やっぱあんなことやこんなこともしてもらわなっ」

 「? 何のことっすか??」

 「こっちの話やこっちの話〜」

 「どうせまたやらしいこと考えてたんだろ」

 「あ、部長おはようございます!」

 「ミチ起きたん?どうする?歩く??」

 「…やだ。このままがいい」

 「はいはい」


 小さい声で「今日はずっといっしょにいろ」ゆうて俺の首元にしがみついてきたミチにでれでれ。やっぱりミチはあんな偽物とは比べ物にならんくらいかわええわ(ぞっこん!)


 「今日だけやない。ずーっと一緒やで?」

 「…約束」


 おぶさったまま指切りげんまん。ミチ顔赤いんやろうなー照れ屋やもんなっ。
 横でさくらくんが仲良しですねーいいながら何故か砂糖吐きそうな顔してはるんでこれ以上イチャつくのは我慢しよ思いますー。









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