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紅と白


腐った世の中に腐ったオレら。





 「おら、そこ!呪物の扱い気ィ付けろっ死にてえのか!」


 革張りのソファーはどうも居心地が悪い。処理頼まれた妖鏡を落としかけた片付け担当の後輩を強い剣幕で怒鳴るも、隣でケータイいじって何かオカルトサイト見てるヘレンは慣れた様子でびくつきすらしなかった。付き合いが長いだけある。つーかこの外人グラサン越しで画面ちゃんと見えてんのか?(視界絶対ピンクじゃん)まあグラサンしててくんねーと色々と困るから現状維持で。

 「けーたK太ぁ日本の怖い話っておもしろいね!何か露骨じゃなくてさぁ」
 「日本の幽霊は人見知りばっかだからな。海外の奴らみたいに目立ちたがらねーんだよ」
 「ふぅん。ヘレン日本のお化け好きかもっ」

 機嫌よさげに微笑んでオレの膝に寝転がってきたヘレンの真っ赤な髪を指で梳く。散々欲しいつってこないだ買ってやったピンクのティアードベアワンピースから太もも(つーか細もも?)が覗いてて「はしたねぇな」つって叩いたら減るもんじゃないもーんって口を尖らせた(殺すぞ)その鼻へし折ってやろうか。

 「K太は『三捨村の忌み子』って知ってる?」
 「とある一族が先祖が犯した大罪によって末代まで祟られ、現代でも稀に生まれては一族に災いを齎すっつー子供の話だろ?」
 「…ヘレンに似てる」
 「歴代の忌み子は皆霊感と泣き黒子がある美しい女児のみ。安心しろ、似てねーから」
 「何その言い方!ヘレンだってかわいいもん!多分!」
 「うるせーな」

 歴代の忌み子は皆、女。右目に泣き黶、透き通るような白い肌、類稀なる美貌、強い霊感を持ち合わせて生まれてくる。どいつもこいつも顔が初代忌み子とよく似ているそうな。

 (そんなイイ女いたら速攻惚れてるっつの)泣き黒子いいよ泣き黒子。ヘレンがうざくなってきたから数点の呪物の処理の為に神社に向かおうと、座ってたソファーから立ち上がる。掃除したばっかで輝いてる黒い床に自分の姿。
 先程持ち主が死んだといって届けられた妖鏡を木箱から取り出して立てかける。
 スプレーでこないだかなり短く切った銀パを整えてると、オレの後ろにキャバ嬢みたいな女が映り込んだ。


 「呪ってほしい子がいるの」

 (…客か、)

 写真片手にそう言った女がオレに迫ってきた。
 一瞬幽霊かと思ったし。人に誰かを呪ってもらおうなんざまた腐った思考回路してやがる。それを商売にしてるオレも相当腐ってるけど(この際、呪物の処理と呪詛返し専門でやってこうかな…)


 気が乗らねぇ。


 「…オレこれから出掛けんだよね。紅い方に頼んで」


 財布とキーと煙草をポケットに突っ込むと、処理の必要がある呪物を数点持って事務所を出た。








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