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彼女の服の袖からは、いつもなにかが零れている。
どうしてなのかはわからないが、彼女はその袖の中に、たくさんの世界を持っているらしいのだ。

今日はきらきらと光る金色の砂粒が、袖から零れ落ちている。砂漠でも抱えているのだろう、一つの砂の固まりと一緒に、小さな蠍が落ちてきた。彼女は蠍をひょいと摘みあげると、袖の内側に放り入れてやった。
海を抱えていた日もあった。一日中、彼女の袖から波の音が聞こえ、満ち潮の時間には袖から水が溢れてきた。


彼女がトラック事故にあったと聞いたのは、ほんの少し前な気がする、
僕はその日、彼女の袖の内側に行くことを決めた。
袖の中は荒れ果てた荒野になっていて、草一本、水一滴無かったのを覚えている。
僕は必死で植物を植え、種を撒き、水をやった。

その介あって、どうやら彼女はすっかり元の元気な姿にもどったらしい。

だけどどうしたことだろう、


僕はもう1000年も、袖の外側に行く方法を探してる。





ふわり

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