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ケロイドの少年



ある一人のケロイドの様な少年が、魚を一匹飼っていました。それはケロイドの少年とは対照的な、世にも美しい魚でした。鱗はルビィをスライスしたように煌びやかな深紅で、目は血の結晶でした。尾ビレはビロード、背ビレはエナメル、水中で吐き出す酸素は、まるで硝子玉のよう。
ケロイドの少年は、その魚を毎日眺めていました。彼は心底、魚を羨んでいたのです。いつしか少年は、一日の大半を水槽の前で過ごすようになりましたが、そのうち彼は、魚に嫉妬心を抱き、怨むようになったのです。水槽の中に手を入れた少年は、こう叫びました。
「君はずるい!君は毎日、僕を見てたろう!僕の顔を、汚いものを見るような目で!それなのに、君はずるい!ずるい!」
彼は魚を鷲掴みにすると、そのまま口へ運び飲み下してしまいました。美しい魚を取り込むことで、自分も美しくなれると考えたのです。
しかし少年は、世にも美しい魚にも劣らない程の、深紅の血を噴き死んでしまいました。そう、紅は危険の色。魚には毒があったのです。
しかし少年の血の、なんと美しいことでしょう。事態にかけつけた少年の両親も、うっとりと彼の血を眺めます。少年は死の間際、深紅に染まった自分の身体を見ました。そして、満足そうに、傍らに立つ両親にこう告げたのです。



「ああ、僕は水葬にしてくれ、」



ふわり

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