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夢主視点Ver


ジャック、ジャック、俺の可愛い綺麗なジャック!
最初はただの憧れだった。デュエルキングと呼ばれていた彼はその名前の最初に元、がついてしまったとしても俺の中ではキングのままで。そんな彼と幼馴染というポジションでいれるのは俺の誇りで自慢だった。
それがいつからだろうか。螺子が緩んだみたいだ。ジャックが魅力的でたまらない!好きだ、大好きだ。愛してる!
彼も俺も男だし、俺はゲイでもなんでもないはずなのに。最初は戸惑ったんだ。こんなに一人の人間が愛しく感じるのははじめてで。
そのうち恋愛に性別なんて関係ない、という結論に辿り付いて、俺はますますジャックが愛しくなった。
恋に自覚してからはまるで、恋する乙女のような気分だった。ジャックがキラキラして見えて、眩しくて。一緒にいると心地よくて嬉しくて。
純粋に一緒にいれればよかった。視界に彼がいて、俺に小さく微笑んでくれるような、そんな日常。
クロウや遊星たちと他愛もない会話をしながらDホイールを弄る。幸せだった。そんな時がずっと続けばいいのに、と思っていた。
そう思っていたのは確かに自分なのに、その願いを壊したのも自分だった。
いつからかジャックを独占したくなった。遊星が近づくのも、クロウが近づくのも許せない。二人は親友で、つい先日まで笑い合っていたのに!
心が闇で塗りつぶされるようにその思いは広がった。それを隠すのに俺は必死だった。どこかで築いた友情を壊したくない気持ちもあったから。
でもジャックへの思いは止まらなかった。ずっとジャックを見つめていたくて、微笑んでほしくて、ジャックの言動が気になって。俺はこう考えるようになった。

(そんなにジャックが見たいなら見ればいい!簡単なことだ)

(そっと、そっと。それなら大丈夫)

ジャックに手を出す勇気はなかった。触れたら壊れてしまいそうで、恐れ多く感じてしまったのだ。そう思い始めたのはジャックをずっと見つめていたいと感じた頃と同時期だ。
遊星たちとの友情も保ちつつ、ジャックをずっと見つめる方法。思いついたのは簡単に言ってしまえば「ストーカー」という行為で。これならジャックを見つめている間、他の人間なんて視界に映らない!
遊星やクロウといる時は大抵ジャックも一緒。不自然にならない程度に振舞えばいい。ジャックが出かけるなら俺もそれとなく外に出ればいい。
ゆっくりとジャックを舐めるように見つめるのが好きだ。長い脚から細い腰、広い背中、綺麗な金髪。表情を変えるアメジストも。見つめている間は全部全部、独占している気分に浸れた。
ジャックは俺の、俺はジャックの!それでいいじゃないか。俺の全部をあげるよ、だからジャックの全部を俺に頂戴。


「どうしたジャック。様子が変だ」

「わ、顔色悪いぜ?」

ジャックの体調が悪そうだ。きっと俺のせい。ごめんね、ジャック。何かに耐えるように綺麗な顔の眉間に皺が寄っている、その表情も綺麗。歪んでいるってわかっているよ。ごめんね。

「体調、悪い?」

本当のことは言えない。言っちゃいけない。言ったら俺がきっと死んでしまう。(それはジャックに嫌われてしまう、という意味で。彼に嫌われてしまったら俺はきっと失意のどん底に突き落とされてしまう!)

「大丈夫だ。心配されるほどではない」

全然大丈夫じゃないのに。まあ俺のせいなんだけどさ。ごめんね、ジャック。多分謝っても許してもらえないと思うけど、心の中では謝らせて。実際には言えない、謝れない。

「そうかぁ?ま、本人が言うならそういうことにしておくけどな」

「ああ。ゆっくり休んでくれ」

「うん。よく寝てよく食べればすぐよくなるよ!」

まるで風邪をひいたみたいな扱い。本当は俺からの視線で悩んでるのに。ジャックも可哀想だよね、俺みたいな奴に好かれちゃって。少し俺は頭の螺子が外れちゃってるみたいだから、余計に。
でも俺の螺子を外したのはジャックなんだよ。だからお互い様だよね。俺の螺子を外してしまったジャックも、そんなジャックを見つめている俺も。

「…ああ」

小さく返事をしたジャックが部屋に戻っていく。ああ、視界から、ジャックが消えてしまう!扉に、遮られて、ジャックが、見えなくなる。
ああ、イイコトを思いついた!「お見舞い」、そんな口実があるじゃないか!
口実作りは容易い。赤い林檎を一つ剥いてお皿に乗せて。心配だから見てくるよ、と告げれば遊星やクロウは簡単に頷いてそれぞれの作業に戻った。俺は一人、笑いが止まらなくなりそうで、かろうじてそれを口端を上げるだけに留めた。

ジャックの部屋の前、俺とジャックを遮る憎い扉へコツ、と軽いノック。返事はない。寝てしまったのだろうか。
それは好都合!俺は零れる笑みを抑えながらドアノブへと手をかけた。




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奥手、故に変態、がテーマのような。そうじゃないような。
次で終わります。




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