□奥手の恋を許して(ジャック)
近頃視線を感じるようになった。
外を歩いているときも、室内にいるときも。誰かに見られている気がする。
考えすぎか、それとも疲れているからそう感じるだけなのか。何度もそう思ったがそうとも思えないほどその視線は自分を射抜いている。例えるならつま先から頭までをゆっくり、ビデオカメラで映されているような。
キングとして君臨していた時にも熱烈なファンはいたし、記者に追われるのも慣れているがこんな、ストーカーのような経験ははじめてで戸惑う。
また、視線を感じた。何処から見られているのかわからない。いや、見つめられるはずがないのに。此処には遊星とクロウ、そしてなまえしかいない。
部外者がいるなら俺以外も気づくだろうし、来客が来るとは聞いていない。だとしたら誰が?
背筋に寒さに似たものを感じた。悪寒。鳥肌が止まらない。
「どうしたジャック。様子が変だ」
「わ、顔色悪いぜ!」
「体調、悪い?」
遊星の言葉に続いて二人が俺の顔見た。変な心配はかけたくなかった。それに気味の悪い視線一つに悩まされている、なんて小娘のような考えを知られたくなかった。(知ったところで彼らは軽蔑等しないだろうが、これは俺のプライド的な問題だ)
「大丈夫だ。心配されるほどではない」
「そうかぁ?ま、本人が言うならそういうことにしておくけどな」
「ああ。ゆっくり休んでくれ」
「うん。よく寝てよく食べればすぐよくなるよ!」
「…ああ」
休め、という言葉に甘えることにしよう。一つ重くため息を吐いてからふらりと立ち上がる。
自分に宛がわれた一室、備え付けのベッドに横たわる。視線に気を集中しすぎていたのか、頭が痛く気持ち悪い。
ぎゅ、と目を閉じてみる。まだ、視線を感じるような気がする。幻覚か、本物かもわからないほど頭は視線に対して麻痺している。
直接的な害はないのだ。ただ異様に見られているだけ。それだけ、と片付けられればどんなに簡単だろう。割り切れないほどに敏感な神経に恨みにも似た感情が募る。
これ以上視線に関して考えたくなくて、俺はシーツの感触に身を寄せ意識を闇へ葬ることにした。
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名前変換が何故か少ないのが屑雪クオリティ…
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