■人肌恋しい(ジャック)
「暇…なんでこんなときに限ってジャックはいないんだ」
眠れない冬の夜。毛布に包まってみても、目をぎゅっと閉じてみても睡魔は訪れない。
いつもなら、こういう時は決まってジャックや遊星とデュエルしたり、それでなくてもカード広げて盛り上がってるんだけど…。
ジャックはどこかに出かけたきり帰ってこない。遊星は機械弄りに夢中で邪魔したらマズそうな雰囲気だし、クロウはもう既に夢の中だ。
クロウは起こしたらきっと相手をしてくれるとは思うけど…流石に俺が眠れないから付き合え、という理由で叩き起こすのは申し訳なさすぎる。
時間が過ぎればそのうち眠くなるだろ、と時計を見やれば5分しか経過していない。
夜は長いと誰が言ったか。全くその通りだ。昼なんてすぐに時間が過ぎていくのに。
部屋の外で聞こえていたタイプ音が止んだ。遊星も寝たのか。暇潰しに付き合ってくれそうな人物は皆寝てしまった。
寒々しい外に出て行く気にはなれないし、それ以前にこんな時間に外に出たら俺なんてすぐにボコボコされる。俺の周りの人たちはデュエルの腕は上々レベルだけど、俺はデュエルの腕は並だし。
少し考えて大人しく寝ることにした。目を閉じてじっとしてれば眠くなるよ、って小さい頃お母さんに言われた気がする。
毛布あるけど少し肌寒いなぁ。冬だから当たり前だけど。人肌恋しいというかなんというか。とりあえずジャックはやく帰って来いってば。寂しいじゃん!
心の中で文句を叫んだ。それと同じくらいに物音が聞こえた。それから足音。
もしかしたら!俺は毛布を跳ね飛ばす勢いで起き上がって部屋の外へ出てみた。
「ジャック!」
「なまえ…まだ起きていたのか」
「寝付けなくて。それより俺、ジャックがいなくて死んじゃうかと思った」
「大袈裟な。昼間は一緒だっただろう」
「でもその後、ジャック出かけちゃったし」
「ああ。…不本意ながら買出しを任された」
「こんな夜遅くまで?」
「量が量でな」
「なるほど。お疲れ様」
「…ああ」
ちょっと疲れを見えるけど、笑うジャックの顔はやっぱり可愛かった!俺の中でジャックは勿論かっこよくもあるけど、可愛くもある。
なんだかたまらなくなってジャックを抱きしめた!ジャックは長身だけど俺の方が背は高い。このときばかりは無駄だと思っていた身長に感謝している!
いきなり抱きしめたらジャックは吃驚したみたいでどさり、と手に持っていた荷物を落とした。視線を下げて顔を覗く。あ、照れてる。
「ジャック、赤くなってる」
「赤くなんてなるか!」
「うん、可愛い」
「ッ、なまえ…」
「…なんかジャックの顔見たら眠くなった」
「この…どういう意味だなまえ!」
「安心したってことさ。ふああ…」
欠伸が漏れたら本格的に眠くなってきた。さっきまで寝付けなかったのが嘘みたいだ。今なら寝れる。三秒で寝れる。
また目が冴えてしまうのはあれだから、俺は部屋に戻ることにした。勿論ジャックと。
抱きついていた身体を離して手首を掴んだ。不思議そうな顔のジャックの頬にキスを一つ。ふにゃり、眠気で変な顔なのは気にしない。
「ね、ジャック。一緒に寝ようよ」
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甘く甘く…を目指して。
裏を書こうと思った…けどそれは次回に。
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