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華、そして紅
「花火?」
「今夜ここで祭りがあるらしくてよ、その最後に打ち上げ花火、やるんだと」

嬉しそうに話す銀時を久し振りに見たような気がした。普段は戦場か薄暗い寺などに居るから当然と言えば当然なのだが。紅い瞳を輝かせて話す姿は『白夜叉』と呼ぶにはあまりにも幼く、意図せず笑みが溢れる。

「一旦、戻んねぇとだけどな」

少し不自然に空を仰いだ銀時に、そう言われるまで先程調達した食料の存在を忘れていた。流石にこれを持ったままでは参加なんて出来ないだろう。「そうだな」と短く返し、祭りとはひどく遠い廃屋へと足を向けた。

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いつの間にか眠っていたらしく、空は既に藍色に染まりかけている。銀時に起こされていないことからまだ時間に余裕があるように思えたが、先刻のように嬉しそうにしているであろう男を待たせるのはなんとなく気が引けた。急いで着替えて銀時の元へ向かう。部屋の襖を開けてすぐに宝石のような瞳と視線がぶつかった。

「行くか?」
「おう」

そう短く言って、どちらからでもなく歩きだし会場へと急いだ。

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「ちょっ、待てっ…高杉!」

麓の町へ着いた時には、出店は既に始まっていたらしく熱気に包まれている。余程有名な祭りなのか、多くの人が行き交っていた。こんな中ではぐれたら堪らない。そう思い銀時の白い手を握ると、後ろからくすっと笑う声が聞こえた。

「あっ綿あめ!高杉、あれ食べてえ」
「どこだよ?」
「たこ焼き屋の隣!」



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一通り楽しんだところで、少し離れた神社の階段に腰を下ろす。大して距離は無いのに、ガラス越しに眺めているような気がした。祭りで味わった熱気のせいなのか、少し涼しく感じる。熱を冷ますように空を見ていると、銀時が林檎飴をかじる音だけがやけに大きく聞こえた。
かと思えば、月も星もなかった黒い空に華…眩しくて大きい、華が咲く。それを合図に空が鮮やかに彩られ始めた。

咲いては散り、散っては咲く。瞬きするたびに色が変わり、暫し呼吸を忘れてしまう程だった。そんな中で銀時に名を呼ばれ、ゆっくりと視線を移す。

「俺さ、金もねぇし、お前の好みとかよく分かんねぇからこのくらいしか出来ねえけど、」

「その、誕生日、……めでと」

花火の打ち上がる音に消されそうな程の小さな声で、今日が8月10日であると知る。日付感覚が狂うようなこの世界で、唯一狂わずにいたこの男に、例えようもない愛しさを覚えた。あんなに近くで聞こえていた花火の音が遠くに聞こえる。

「銀時」
「ん?」

抑えきれず、銀時を抱き寄せた勢いのまま口づけ。かじっていた林檎飴のせいなのか、やけに甘く思えた。人が居ないのを理由に、何度も重ねる。それに交わるように花火が何度もあがった。ラストスパート、と言ったところだろうか。

唇を離したと同時に、一際大きく、美しい真っ赤な華が、咲いた。その華のせいか否か、銀時の頬が赤みを帯びる。それだけのこともただ愛しく、耳元で言ってやった。


「ありがとな」



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かなり早いですが高杉誕生日おめでとう!

  

あきゅろす。
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