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その優しさを嘘だと思いたかった
空が濁ったと思えば、細く冷たい雫が溢れ落ちてくる。身体中にまとわりついた真紅を洗い流すかのように。無意識に刀を握る手に力が入った。足元には天人と、今朝まで笑っていた奴の血濡れた姿。

「銀時、早くしろ」

ぱしゃり、と水飛沫があがる音。ゆっくりと振り返れば不機嫌そうに顔を歪めた高杉が居た。

「…なあ、もしも明日。俺が死んだらお前は泣いてくれんの?」

突拍子もない問い。信頼していた筈なのに。足元の男の為に泣くことが出来ない。信頼していた奴が突然消えたら涙が出るなんて嘘だった。そんな優しさなど持っていない。俺を責めるかのように雨足は強くなる。

ここで『泣くわけねぇだろ』と。返事がくれば、少しは楽になれたのだろうか。

「安心しな、てめぇの背中ぐれぇなら守ってやるさ」

この際、『泣いてやってもいいぜ』と返ってきても良かった。こいつは俺の死を許さない。きっとそれは優しさなんて甘いもんじゃなくてただの独占欲だろう。

「てめぇは…死なせねぇよ」

ああ、でも。俺の罪を知っていて。生きて償えと言うのならそれは優しさだ。こいつはこんなに優しい男だったかと思考を巡らせる。…この優しさは錯覚かもしれない。

「…ん、」

考えることに夢中になっていたら高杉にキスをされた。親指が目元をなぞる。

「だから泣くんじゃねェ」
「…………………泣いてねぇよ」

涙?まさか。それは空の雫だろう。俺のじゃない。そう思っているのに、上手く声にならない。喉奥にからみついているよう。
天人を殺めすぎたせいなのか、生きている感覚がしないのに。俺を射抜く高杉の瞳がそんな錯覚から醒ましていく。もう一度キスをされ、触れた唇の温もりから自身の生の感覚を取り戻せた気がした。

「行くぞ。長居してっと明日に支障が出る」

そう言って強引に手を引く高杉。俺の手が冷たいのか、高杉の手は熱いように感じられた。その熱が俺の体温と溶け合うノが心地好い。

「お前はさ………」

雨の音も、風の冷たさも、漂う硝煙と血の匂いも。幻のような感覚だった。そこに在る筈なのに白昼夢のように曖昧。喉にからみつく声さえ、自分のものではない気がした。
頬を雫がなぞったのは高杉のせいだろう。これは涙ではない。

「…優しすぎるよ」



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アニメ銀魂4期決定おめでとうございます。そして有難うございます。記念に書きましたがシリアスになってしまいました…。でもこのあと二人はヅラや辰馬に呆れられるくらいイチャつくので大丈夫です(?)

  

あきゅろす。
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