◆千速
原題:黒いお姫さま
ある日、街で出会った少女。どこか影のあるその美しい少女に、俺は一目で心を奪われた。
自分と同じくらいであろう歳なのに、初めて外に出たという彼女は見るもの全てが新鮮でとてもはしゃいでいた。
そして日が沈みかけた夕刻、家へ送ると言うと彼女は表情を暗くし、震える指である場所を指す。その先を見て、俺は表情を強張らせた。
そこは、この国の人間なら知らぬ者はいない呪いの城。そこに住む悪魔を倒すべく何人もの男が其処へ向かい、夜が明けた次の朝には首を折られた無残な遺体で見つかっている。
何故そんな場所にと尋ねると、自分はその化け物を外へ出さない為の生贄だと告げた。
ずっと暗い場所に閉じ込められて、一度だけでいい、外の世界を見たくて逃げ出してきたのだという。
「生贄として生きるのが私の運命…存在理由なんだ」
だけど、一時でも人並みに過ごせて……恋が出来て、よかった。
そう言い、彼女は悲しく笑う。
城へ帰っていくその後姿を見て、俺は彼女を救い出すことを…城に巣食う悪魔を倒すことを決心した。
BGM:やましずく様【因果律の花】
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