◆殺あぐ
原題:美女と野獣
私の横で本を読んでいた彼女が、涙を流しながら私に尋ねてきた。
「やっぱり、物語はハッピーエンドがいいです…ね、貴方もそう思いませんか?」
どうやら内容は悲恋物だったらしい。
ハッピーエンドばかりじゃマンネリでつまらない、偶にはそういうのも有りでしょうと私が言えば、彼女は拗ねた様に口を尖らせた。
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そんなある日、妹が倒れたという便りが届いたと彼女は私に戸惑いながら言ってきた。
恐らく彼女がここへ来た日、貴女が居なくなると自分が死ぬと伝えたことを気にしているのだろう。
それは嘘ですよ、と言うと案の定彼女は怒った後、では外へ出ていいかと尋ねてくる。
「身の回りの世話をする人間が居ないと困るので、出来れば一週間程で帰ってきて欲しいですね」
そう言うと、彼女は頷いて妹の元へ向かった。
そうして遠ざかっていく彼女の後姿を見送りながら、私はその背中にポツリと呟く。
「さよなら…これで、私と貴女の物語は終わりです」
これで、貴女は化け物の私から解放され、自由になった。
…貴女が好きなハッピーエンドですね。
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