◆カル愛
原題:赤ずきん
黒いお下げに眼鏡をかけた、赤い頭巾の小さい姿。
その姿が遠目に見えて、俺は慌てて分かれ道の片側…いつもの木の裏に隠れる。
暫くして岐路に立った彼女は少し迷った後、俺が隠れている方とは逆の道を歩いていった。
空を仰ぎ見ながら掲げた自分の手は赤毛で覆われていて、先には鋭い爪が覗く。
頭に触れれば、大きな耳がある。口内を探れば、舌に牙が当たる。
何回も、何回も、君との物語を夢見た。
何回だって、何回だって、神様に願った。
けれど、どれだけ運命を罵ったって、どれだけ希ったって…この爪も牙も消えない。
あぁ…どうして俺はオオカミなんだろう?
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分かれ道の向こう側のいつもの場所、その木の向うに赤毛の尻尾が覗く。
私はそれに気付かないふりをして、そちらではない道を選び歩を進めた。
いつも彼がそこにいることは分かっている…けれど、私が彼と出会ってしまうと【私】の物語が始まってしまうから。
私はそれに【気付かない】で通り過ぎることしか出来ないんです。
あぁ…どうして、私は赤ずきんなのでしょうか?
BGM:やましずく様【おおかみは赤ずきんに恋をした】
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