ラピスラズリの泪
003
物々しい重圧感があるドア。
金色のプレートには、『理事長室』と書かれている。
コンコンコン
ドアをノックすると、中から『入れ』と声が掛かる。
ガチャリ、とドアが開かれると同時に、良く似た背格好、同じ顔をした2人の女子生徒が振り返る。
「跡部生徒会長、良く来たね」
目の前にいる男が、柔らかい眼差しで景吾を見つめる。
[呼び出しておいて良く云うぜ]
内心毒づきながら、景吾は「何用でしょうか」と告げた。
「彼女達が新しく入った編入生だ。君に、学園案内を頼みたい」
そんな景吾に気付かずに、話は進められていく。
「あの……」
そんな中、柔らかい声が響く。
「何かね?えーと」
「奏汰です」
「あ、ああ。済まないね。見分けが……」
その言葉に、ポニーテールが笑い声をあげた。
「そりゃそうよ〜。一卵性だから、初見で見分け付く筈無いわよ」
「姉様。一度申しただけでは判りませんよ(--;)」
「ったく……もう一度云うわよ。ポニーテールが姉の陽汰(ヒナタ)で、こっちが妹の奏汰(カナタ)」
ふぅ、と、溜息を吐く。
「で……何かな?」
「この方の授業を中断させてまで行う事柄ではありません。ですので、学園案内は無用にございます」
「え?」
「事前に下見をしておりますれば」
「え〜…」
ブーイングを飛ばす姉、陽汰に対し、小さく溜息を吐く、妹奏汰。
しかし、それは一瞬だけの事であった。
「私共は、ご挨拶を兼ね、登校する日程と、学材を頂きに参ったまでの事。聞いては居らぬ事柄に対して、拒否出来る筈。こちらの都合も問わず、勝手に物事を決めるのであれば、私にも考えがございますが」
冷ややかな空気を纏いながら、鋭い眼差しを向けるその様は、まるで、肉食動物その物。
ゾクッ、とした物が背筋を伝う。
が、その雰囲気を打ち消したのが、
「奏ちゃん、止めなさい」
姉、陽汰の言葉であった。
「しかし、姉様……っ」
「あたしの命令が聞けないの?」
「〜〜〜〜ッ。……判りました」
苦虫を噛み潰した様な表情で、す、と引き下がる。
[シスコンか?]
その様子を見ていた景吾はそう思う。
「今回は、学材の引き取りと、総代の――…違った。生徒会長の紹介だけと云う事で終わりましょ。行くわよ」
陽汰は、ヒラヒラ、と手を振ると、鼻歌交じりに歩き出す。
「では、これにて」
優雅に頭を下げると、陽汰の後を歩き出す。
その様は、まるで執事の様であった。
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