ラピスラズリの泪 001 桜の花弁が、ヒラリヒラリと、舞い落ちる。 ふわり、と薫る、桜が春の訪れを告げる4月――……。 新入生が、姿を見せる中、見慣れない制服を着た、独りの女子生徒が、テニスコートに姿を見せていた。 それに気が付いたのか、男子生徒が、その女子生徒を見る。 「きゃあ、跡部様ー!!」 「跡部様!!跡部様!!」 それに気が付いた一部の女子生徒の黄色い悲鳴に、眉根を寄せている。 そんな賑やかなテニスコートに、凍てつく眼差しを向け、小さく溜息を吐いて、何かを呟いている。 ここからは、何も、聞こえない。 「跡部、何見てるん……って、見慣れん制服やな」 「忍足」 丸眼鏡を掛けた少年が、話掛けてくる。 「編入生なん?」 「さぁな。何も聞いちゃいねぇ」 記憶を辿るが、編入生が来るなんて云う話は聞いてない。 それに、氷帝は名門中の中でも名門で、編入試験は難しく、中々合格する事は出来ない。 だが――…試験が行われたのは、約1週間前。 結果が出るのは早くても、明日だ。 それまでは様子を見るしかない。 しかし―――…、気になる。 冷たく、凍てつく眼差しの中に宿る、強さの意味が何を示すのか。 ここまで、興味を惹かれる女に出会えるなんて、思ってもみなかった。 景吾は、口角を上げ、女子生徒を見ていたのだった。 [次へ#] [戻る] |