Wonderful days やなこった 「でも、ハチミツくん。氷帝(ウチ)に何の用?」 こてり、と、首を傾げる。 「聞いていないのか?」 「何を?」 「合同合宿の話だ」 「ボクはテニス部じゃないからね。そう云うのは知らない」 その言葉に、国光は眉間にシワを寄せた。 「ボクは引退したんだよ。引退」 「引退する年齢じゃないだろう」 「日本はミックスシングルスはしてないだろ?キミと試合は出来ないし、ダブルスはキミ以外と組む心算はないぞ」 フニャと笑う奏汰。 あれだけの実力を眠らせる、そんな事出来ない。 それに、成長した自分を見て欲しい。 そんな欲に駆られた国光。 「なーにを企んでいるんだい?」 訝しむ様な表情を浮かべながら、国光を見る。 「奏汰。俺と試合をしてくれないか?」 「やーなこった」 即答に、ピリピリ、とした空気が流れる。 「拒む理由は?」 「ラケットは家」 「俺のを貸そう」 「靴はローファーで、コートを傷めるからダメ。ウェアもないし」 「………」 「そんな表情(カオ)しないの。ボクは居なくならないから」 奏汰の言葉に、景吾は一言。 「どんな表情(カオ)してんだよ」 と、呟いた。 国光の表情は読み辛い。 従兄妹だから、判ったのだろうか。 だが、その時に見せた、奏汰の哀しみに気付かなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |