Wonderful days
忘れ物はなんですか?
桜井家、リビング。
本来なら、仲睦まじい会話が交わされる…筈だった。
「……」
「…あぅ」
ソファに座る国光の無言の睨みに、奏汰は俯く。
それもその筈。
奏汰の家に着いた時の事―…。
◆◆◇◇◆◆◇◇
「あれ?」
「どうした?」
きょろ、と、辺りを見回す。
ガチャリ、と、ドアを開けて、周囲を見るが、小首を傾げた。
「奏汰?」
「うーん…」
むむっ、と云わんばかりに小首を捻る。
「奏汰、どうした?」
「――…靴が」
「靴?」
そう云われた国光は、奏汰の足下を見れば。
靴下は真っ黒になり、所々破れていた。
「履くの、忘れた」
「……何故忘れる(--;)」
国光の静かな突っ込みに、奏汰は苦笑いを浮かべるしかなかった。
◆◆◇◇◆◆◇◇
「普通は判るだろう?」
「―…ごめんなさい」
どうやら、テニスコートを傷めたくない奏汰は、ローファーを脱ぎ、素足で試合をしていたようだ。
「何事にも懸命になるのは判るが、肝心な物を忘れるのは…」
「わざとじゃないもん」
「奏汰」
「ホントに忘れてたんだぃ」
奏汰の膨れっ面に、国光は溜息を吐いた。
「きっと、陽香が持って来てくれるもん」
「お前は……」
痛む頭を押さえ、国光は何度吐いたか判らない溜息を吐いたのだった。
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