早く辞めたい、早く辞めたいと思いながら今日もテニスの道具を持って登校した。










#4










 このあいだの試合で負けたのだから本来なら3年は引退ということになっているけど、今週末の部内の引退試合まで一応参加しなくちゃいけない。

 乗り気でない受験勉強もあるわけだから、参加しなくちゃいけないっていう暗黙のルールはなしにしてほしかった。

 1、2年だって3年がいないほうが伸び伸びとできるし、早いうちから責任感をもって活動ができるんじゃないのかな、なんて。



 誰に言うわけでもない文句をひたすら考えながら昇降口に入る。

 すると、下駄箱の向こうに彩子が見えた。

 あはは、と笑い声がよく響く。



 後輩たちにとっては、彩子は必要な存在だから、やっぱり引退試合までちゃんと3年は参加するべきというルールはあったほうがいいんだろう。

 ほら、彩子に話しかける後輩の笑顔がとても素敵だこと。



「約束ですからね!」

「分かった、分かった」



 そう言って満面の笑みで指切りをする。



 何となく出て行きづらくて、あたしは下駄箱の影に隠れたままケータイを取り出した。

 テンションを上げるのが上手くないあたしが行ったら、あの楽しそうな雰囲気を壊しちゃうんじゃないかと思った。



「楽しみにしてますからね!」



 ケータイで天気予報を見てみた。

 昨日と同じ気候らしい。

 つまりはテニス日和。



 あたしはケータイを閉じて、もう一度彼女らのほうを伺う。

 すると談笑しながら奥へと歩いて行く2人の姿があった。



「こんなとこで話さなくても……」



 つまらない独り言をこぼして靴を履き替える。

go(#)

木春菊

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