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颯〜はやて〜
「おひさしぶりの日」

幸い敦盛の熱は夜には下がり、朝はちゃんと起きて朝餉を食べれた。

「まあたいした事なくて良かったな」
ヒノエは敦盛の回復に喜んだ。

「…迷惑を掛けた。すまない」
朝餉を終え、濡れ縁に座って庭を眺めていた敦盛は、謝罪の言葉を述べた。

「気にすんなよ! お前が熱を出すのなんて日常茶飯事なんだから」
(……それはどういう意味なのだ…?)

ヒノエの慰め? に 敦盛は心の中でツッコんだ。

「――…ヒノエ〜!」
玄関で元気な声が響いた。


       颯〜はやて〜「おひさしぶりの日」


「おう! お前ら、ひさしぶり!」
声の主はヒノエの遊び仲間達だった。

「ひさしぶり!…じゃないよ。最近遊び場に全然来ないじゃんか」
ヒノエと同じくらいの背丈の子が“もう!”と頬を膨らませた。

「ん? ヒノエ、その子…」
一番年上っぽい子が、ヒノエの後ろに隠れている敦盛を見つけた。

「……」
敦盛はヒノエの後ろで小さくなった。

「あれー? この子たしか平家の子だったよね」
ヒノエより少し年長の子達が、後ろに行き敦盛の姿を確認した。

「しばらくウチで預かっているんだ」
ヒノエがみんなに説明した。

子供達は“そうなんだ”とか“またいっしょに遊べるね”とか、敦盛と会えた事を素直に喜んだ。

「じゃあこれからみんなで遊ぼうよ!」
子供達はみんな賛成した。

               ☆

「何して遊ぼうか」
ヒノエ達は那智の森にやって来た。

「そうだなぁ…ねえ、敦盛は何したい?」
「え!……そ、その……わたしは…」

突然声をかけられ、シドロモドロになり ヒノエの後ろに隠れた。

「え〜!? 去年はあんなに仲良くなったじゃんか〜!」

子供達には“人見知り”という言葉が無いのだ。
確かに、敦盛は去年熊野に来た時、ヒノエの紹介で仲間の子達と仲良くなり楽しく遊んだ。

初対面で“人見知り”してしまったが、ヒノエの仲間達はみんな良い子でそんな敦盛を優しく仲間に加えてくれた。

だけど一年経ち、敦盛の“人見知り”はまた復活してしまったのだ。

「しょ〜がね〜なぁ…… …! そうだ!」
ヒノエは閃いた。
               ☆
「ジャ〜ン ケ〜ン…」
「ポン!!」

子供達は“かくれんぼ”をする事にした。
去年“かくれんぼ”をして敦盛は打ち解ける事が出来たからだ。

「あんちゃん が オニだ〜!」
「かくれろ〜!!」
みんな 各々 隠れ場所を探しに行った。

               ☆
「み〜つけた!」
「くっそ〜…“かくれんぼ”で負けた事無いのに」

ヒノエは“かくれんぼ”ではいつも最後に見つかるくらいの上手だった。

そんなヒノエを三回戦目のオニの子はクスクス笑っていた。

「…何が可笑しいんだよ」
ヒノエはジト〜っとオニだった子を見た。

「だって敦盛を見つけた近くを探したらヒノエがいるんだもん」
「そうそう」

最初に見つかった子が賛同した。敦盛もコクコクうなずいた。

「あ〜つ〜も〜り〜!」
ヒノエはワナワナ震え、
「なんでオレの居場所教えるんだよ!」
プンプン怒った。

そんなヒノエの様子に仲間の子達は“あははは〜!”と笑った。

「だってしょうがないじゃん、敦盛はヒノエの弟分みたいなモノだろ〜?」

(!?)「…へ?」
ヒノエと敦盛は同時に呆っ気にとられた。

仲間の子達の年齢は上から十二歳、十歳、九歳、八歳で十二歳の子と八歳の子は兄弟なのだ。

「良かったじゃん、今までずっとヒノエが一番下だったんだから」
八歳の子がヒノエの肩に寄りかかりながら言った。

「……まぁね!」
(!!ヒノエ!?)
ヒノエの反応に敦盛は狼狽した。

「じゃあこれからは敦盛がオレ達の一番下な!」
「えっ!? えっ……ち、ちがう!」
このままではいけないと敦盛は必死だった。

「わたし、八歳。ヒノエより年上だ」
敦盛は間違いを正した。

「え〜っ!!? 八歳!? おれと同い年〜?」
敦盛をマジマジ見“何月生まれ?”と聞いてきた。

「え…さ、皐月…だが」
「あ〜良かった〜! おれの方が先に生まれてる」

自分は如月生まれだという。
「三ヶ月だけじゃん」
兄が弟の揚げ足を取った。
「いーの!」

子供にとってちょっとの歳の差は重大なのだ。

               ☆

「…わたしはどうすれば年長に見える?」
子供達と別れ帰り道に敦盛は呟いた。

身長では勝てないし…見た目がダメなら態度で年長らしく振舞わなければならない。

「そうだなぁ…でもお前泣き虫だし、我慢が足りないし、ワガママだし…」
「!!! わたしは そんな なのか!?」
敦盛はショックを受けた。

「………わかったのだ」
敦盛は決心した。

「? 何が わかったんだよ」
「わたしはもうワガママは言わぬ。我慢もするのだ」

“泣き虫”の事は無視した。それは自分が“泣き虫”だと認めていないからだ。

「へ〜、ホントかよ〜?」
ヒノエは全然信じちゃいなかった。

「ほんとなのだ! そうだ、ジャンケンなのだ!これからは意見が対立したら、ジャンケンで勝った方の言う事をぜったい聞く決め事を作ればいいのだ!」

―― ふたりの“ルール”が決まった瞬間だった ――

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