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颯〜はやて〜
「ブランコ、再び」

嵐が過ぎ去り、今日は台風一過だった。

「ヒノエ〜………わわっ!?」
敦盛がテコテコ外へ行くと、いきなり足元で水が跳ねた。

「……む〜!何するのだ」
「あはは! 水たまりを見ると、つい やりたくなるんだよな」

ヒノエが思いっ切り水たまりにダイブし、水飛沫が敦盛の袴に飛んだ。

「ちょっと袴が濡れただけだろ。それくらいすぐ乾くさ。そんな事より、今日は裏山に行くぞ」
悪びれる様子も無く、ヒノエは敦盛の返事も待たずに手を引いた。

「むむ〜!! なんでいつもヒノエが決めるのだ」
プゥと頬を膨らませたが、素直について行くのであった。

       颯〜はやて〜「ブランコ、再び」

「裏山…と言うとブランコがあったな。あれは楽しい遊具であった」
「そうだぜ。お前、去年あんな事があったのにブランコ好きなのか?」

去年、敦盛はブランコに初めて乗った。
最初は楽しかったのだが、ヒノエが調子に乗り、ブランコを高く揺らした為、敦盛は見事に落っこちた。

「あ、あれはわたしの失態だ……ヒノエにも…悪い事をしたと思う」

落っこちた敦盛は大泣きして、ヒノエは大目玉を食らった。

「そんなの、もう忘れたぜ。お前も気にすんなよ」
「………うん!……ヒノエは…優しいな」

敦盛はニコっと微笑み、繋がれたヒノエの手をギュっと握り返した。

「な、なな…」
ヒノエは狼狽し、うつむいた。

「どうしたの、ヒノエ?」
(……コイツ、天然か…?)
敦盛は“ん〜?”とヒノエの顔をのぞき込んだ。

「別に!…なんでもね〜よ」
ヒノエはプイっとそっぽを向いた。

(コイツには一度“恥じらい”というものを教えてやんね〜と…)

「あ! あの木だな」

ヒノエの心情など、知る由も無い敦盛は、ブランコが繋いであった木に走っていった。

               ☆

「……………ヒノエ」
「………ああ」

ブランコは跡形も無く破壊されていた…

「……な…なぜ……」
敦盛はこの世の終わりみたいな顔をした。

「…昨日の嵐の所為だな。まったく!」
ヒノエは腕を組みブランコの残骸を蹴飛ばした。

「…もう……遊べないのだな…」
敦盛はメソメソ泣き出した。
「バ〜カ。壊れたら直せばいいだけだろ。メソメソすんな!」

敦盛のオデコを軽く突き“今からブランコ、直すぞ!”と張り切った。

               ☆

「さて、と…まずは材料だな」
テキパキとブランコの残骸を調べ、どんな材料が必要なのか調べた。

「ヒノエ、ブランコ作れるの!? すごい!」
「あったりまえだろ! オレを誰だと思ってるんだ!!」
エッヘン! と胸を張った。

「ちゃんと宋の職人が造っているトコ見てたんだ。簡単だぜ!
 木の板を紐でくくって、木の枝に繋げばブランコの完成だ!」

「なるほど…それならば わたし達だけでも 作れそうだ……わたしは どうすれば 良いのだ?」
「そうだな、じゃあ紐をもらってきてくれ」
「わかったのだ」

ヒノエに指示され、敦盛は本宮へ向かった。

               ☆

「…湛快どの?……若葉どの?」
本宮に着いた敦盛は、キョロキョロ ヒノエの両親を探した。

「坊っちゃん、今は別当殿も奥方も留守ですぜ」
福頭領が声をかけてきた。

「…そう…ですか………う〜…どうしよう…」
このような事態を想定していなかった敦盛は悩んでしまった。

「どうかしたんですかい? そういえば若はどこに?」
「……えと…実は……」

               ☆

「……なんで喋っちゃうんだよ…」
「え? ダメだったの?」

敦盛は福頭領にブランコの事を話した。

ふたりでブランコを直すので紐が必要なのだ、と…
それを聞いた福頭領は
“おふたりだけでは危のうございます。私もお供します”
と、ついて来たのだ。

「だって…悪い事ではないし…」
(今度から、ないしょにしたい事はちゃんと言おう)

「…ヒノエ……怒ってるの?」
敦盛はずっと黙ったままのヒノエに、オズオズ聞いてみた。

「別に怒ってねぇよ。人手が多い方が有利になるし」
「…! 良かった!」
敦盛はホっと胸を撫で下ろした。

「じゃあ、若、坊っちゃん。私は何をすりゃいいんですかい?」
「そうだな、じゃあこの板を同じ長さに切ってくれ」
ヒノエは福頭領に板と鋸を渡した。

「ヒノエ〜、わたしは?」
「敦盛?…えーと……そうだなぁ…」
ヒノエは何か敦盛に出来そうな作業は…と考えてみた。

(鋸は危ないし、木になんて登れっこないし…)
チラリと敦盛を見た。早く自分の役目が欲しいと目で訴えた。

(そんな眼差しを向けられても…)
ヒノエは悩んでしまった。

「…ヒノエ〜、まだ〜?」
敦盛はムゥっと繭を寄せた。
「…わかってるって、今考えてんだ」

「若。では坊っちゃんにこの散らばった残骸を片してもらう、てのはどうですかい?」
福頭領が助け舟を出した。

「!…そうだな!敦盛、この前のブランコ片付けとけ」
「わかったのだ〜!」
敦盛は嬉々として作業に取り掛かった。

「「ふう、助かったぜ」」
「「お安い御用ですぜ」」
ヒノエは福頭領の機転に感謝した。

               ☆

「よ〜し、この枝にくくり付けたらブランコの完成だ!」
木の上に登ったヒノエは枝に紐をくくり付けた。

「若〜! 水軍式の結びですか〜?」
「あったりまえだろ〜!」
ヒノエは簡単に解けない結びでくくった。

両方、結び終わればブランコは完成した。

「わ〜!! 元通りなのだ〜!」
敦盛はテコテコ、ブランコを捕まえた。

「…あ!」
「?どうしたんだよ。乗らないの?」

一向に乗ろうとしない敦盛に尋ねた。

「……ジャンケン…するのか?」
「…そうだなぁ……一回だけ、な。その後は交代で乗ろうぜ」
「うん! 今度は負けないのだ。ジャ〜ンケ〜ン…」

―― 今度は最後までブランコを楽しんだふたりだった ――

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『ブランコの作り方は管理人の思い込みなので、マネしないでください』



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