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颯〜はやて〜
「隠し部屋大掃除日記」

「キミ達、何か僕に隠している事があるんじゃないですか?」

梅雨の晴れ間、遊びに行こうとしていたふたりを 弁慶が止めた。

「はあ?…別に何も隠してねぇけど」
ヒノエは不機嫌に答え、敦盛もコクコクうなずいた。

「…本当ですか?……でも………おかしいですね」
「……どうかしたのですか? 弁慶どの」
敦盛がオズオズ弁慶に聞いてみた。

「僕の部屋に置いてあった本の位置が違うんですよ…」

(!!!!!)×2

ヒノエと敦盛は動揺しまくった。

「あ、敦盛っ! ちゃんと元通りだって言ったじゃないか!」
「ヒノエがあまりにも散らかすから間違ってしまったのだ!」

「……ふうん…やっぱり僕の部屋に入ったのですね……」

(!!!!!!!)×2

ふたりはまんまと弁慶の策略にはまってしまった…


      颯〜はやて〜「隠し部屋大掃除日記」


「僕は片付けが苦手なんですよ。物の位置なんて覚えていません♪」
笑顔で言ってきた。

「てめ〜! ハメやがったな〜!!」
「ごめんなさい ごめんなさい…」
ヒノエはプンプン怒り、敦盛は謝りまくった。

「何を言っているのやら。勝手に人の部屋に入って悪い子達ですね」
珍しく敦盛も数に入っていた。

「そんな悪い子達には罰を与えてあげましょう…」
弁慶はフフフ…と不敵な笑みを浮かべた。

「ば、罰っ!? ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい…!!」
「な、なんだよ! 何するつもりだよ!!」

「簡単な事です」
弁慶はニッコリ微笑んだ。

               ☆

「…ったく! せっかく晴れたのに」
梅雨の時期、外で遊べる日が少ない貴重な晴れの日に、ヒノエと敦盛は 弁慶の部屋の大掃除を手伝う事になった。

「大体、大掃除なんて大晦日にやるもんだろ」
「ヒノエ、口じゃなくて手を動かしてください。あ、敦盛くん。コレも虫干しに持っていってください」

書を本棚から次々落としていった。弁慶の行動の様は、本当にヒノエそっくりだった。

「…あの弁慶どの。乱暴に扱うと本が傷むのでは?」
「大丈夫ですよ、敦盛くん。読めれば問題ないです」

(…やはり血の繋がった叔父と甥なのだな)
敦盛は心の中で確信した。

               ☆
「……よいしょ…」
敦盛は弁慶に言われた通り、本を日当たりのいい場所に並べていった。

それはもう、キッチリカッチリ 行儀良く並べられ、ちゃんと全てに日が当たるよう計算し尽くされた、見事な虫干しだった。

「おやまあ、これは見事な光景ですね。やっぱり敦盛くんに任せて正解でした」
「お褒めに預かり光栄です」
敦盛は自分の作業を褒められ、大満足だった。

「そんな敦盛くんには、後でご褒美をあげましょう」
「ほんとですか! わ〜い!!」
敦盛は素直に喜んだ。

(ふふふ、ヒノエもこれくらい素直なら可愛気があるものを…)
弁慶はまったくタイプの違う少年ふたりを愛しく思った。

               ☆

「ちぇ〜〜。こんなのやってらんね〜ぜ」
ヒノエは片付けにもう飽きていた。

「大体、こないだ敦盛と片したばっかだっつーの!」
近くにあった箱を蹴った。

(!?!?!)

箱はものすごく重く、蹴った足を負傷してしまった。

「〜〜〜!! いって〜!! もう! 何なんだよ!!」
爪先をさすり、ひとり腹を立てていた。

(………?………ひとり?)

ヒノエはニヤリと企んだ。
ソ〜っと部屋の外を見渡し、誰もいない事を確認した。

(へへへ……今のうちに…)
ヒノエはコソコソ脱出を試みた。

               ☆

「へへ〜ん! オレをひとりにしたのはマズかったな! 弁慶」

本宮から無事、脱出 出来た 喜びに浸っていると…
「何がマズいんでしょうか? ヒノエ♪」

(!!!!!)

振り返るとニコニコ笑顔の弁慶と、ウルウル瞳の敦盛がいた。

「ね、敦盛くん。僕の言った通りでしょう」
「…ヒノエ〜、ヒドイのだ〜」

「な、ななな…なんでこんなところにいるんだよ!!」
ヒノエは上擦った声で尋ねた。

「キミはひとりにしたら、きっと逃げ出すと思っていたから、待ち伏せていたんです♪」
「う〜〜……信じていたのに…」
敦盛はヒックヒックとしゃっくりあげた。

「可哀想に…敦盛くんはキミがそんな事をするはずが無い、と信じていたのですよ」
弁慶はヨシヨシと敦盛を宥めた。

「キ、キタねーぞ!! 弁慶っ!!!」
「まったく、何を言っているのやら……でも、いいですよ」

「……へ?」
ヒノエは思わぬ返答が帰ってきて、呆気にとられた。

「…キミには別の罰を与えてあげましょう…」

弁慶はフフフフフ…と不適な笑みを浮かべた。

(!!!こ、この腹黒 真っ黒薬師め〜〜〜!!!)

ヒノエはワナワナ震えたが、この状況を打破する策を思い付けなかった。

               ☆

(〜〜〜〜〜)
ヒノエはゲンナリしていた。

弁慶から与えられた罰は新しい薬湯の開発の手伝いだった。
飲みにくい薬湯を少しでも和らげる為に、味見を頼んだのだ。

「薬湯って言っても薬だろ! そんないっぱい飲んでも大丈夫なのかよ!?」
「平気ですよ。薬草は使っていませんし。追求するのは味ですから」

言いながら湯飲みを渡した。
しょうがなくヒノエは一気に飲み干した。

「!?〜!!〜!!!」

ビックリするくらいマズかった。

「マ、マジぃ〜〜〜!! なんだよ、コレ!?」
「おやおや、コレは美味でない、と…」
弁慶は平然と薬湯の感想をメモした。

「もうやだ!!」
「何 言ってるんですか。まだ始まったばかりですよ」

「あんたは甥っ子が可愛くないのかよ!?」
「キミからそんな言葉が出るなんて思ってもみませんでした。可愛いに決まってるじゃないですか♪♪」
弁慶はヨシヨシと頭を撫でた。

「だったら! もう終わり、だな」
弁慶の手を振り払い、ソソクサと部屋を出ようとした。

「……それとこれとは話が別です」
むんずっと襟首を掴み、羽交い絞めた。

「…ひとりで飲めないなら飲ませてあげましょう。キミが小さい頃、よくこうしてあげていたんですよ」
弁慶はニコニコ湯飲みを手にした。

「な……バ、バカ…や、やめ……!…!〜!」
薬湯の苦味がヒノエを襲った。

「う〜ん……コレもいまいち、と…」
弁慶は書き書きメモをとった。

(こ、こ、こんなの……身がもたねぇ…)

運動もしていないのに、ヒノエはゼエゼエ息切れした。

「じゃあ、次は…」
弁慶が薬湯を準備していると…

「弁慶どの〜! お掃除、終わったのだ〜!」
敦盛が作業の終了を告げに来た。

               ☆

部屋は見事にキレイになっていた!!

「あっちの本棚には薬の本が…そっちの棚には古き伝承の資料が…この箱には……」

「あ…あ……わ、分かりましたよ。ありがとう、敦盛くん」
(す、すげーな…)
掃除がキライな叔父と甥は素直に感心した。

(…敦盛くんには悪いけれど……僕には覚え切れません)
敦盛は完璧に掃除が完遂した事にウンウンと納得していた。

―― 季節外れの大掃除 ――

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あきゅろす。
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