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いろいろお題
[遙か6]〜蠱(ん)惑的な新メニュウ〜


「お願いなのだ、千代><」
「いいえ、貴方は いつも そう言うのっ」

飲食街の ミルクホゥル前で 千代と九段が 何やら揉めていた。


〜蠱(ん)惑的な新メニュウ〜



場所は ところ変わって 煉瓦街。

「もう 買い忘れは 無いかな〜」
「ええ。私とした事が 調味料の残りを 見誤るとは…」

以前は身を潜め、月に一度の買い出ししか 出来なかったが、帝都の危機は去った。
帝国軍の 闇の部分も 見え隠れし、鬼の一族への不信も 解かれつつある。
街へ行く頻度も 多くなっていたのだ。

「仕方ないよ〜。ダリウスさんが ちゃっかり 料理してたんだから^^」
「思い出させないでください…凹」

               ☆
               ★

ルードは ほぼほぼ ダリウスと共に行動している。
主に古美術商の秘書としてだ。

だが四六時中いっしょ、という訳にもいかない。

その日、事件は起こった。
ルードが家事をしている最中を見計らって ダリウスが 厨房に立ってしまったのだ(笑)

それは あまりにも ひっそり、コソコソ…だったので・・・・・

「ル、ルルル…ルードくーん!! どこー><」
「何ですか コハク。騒々しい」

「あの! あのね、落ち着いて、聞いてねっ!」
「落ち着くのは まず貴方でしょう。まずは深呼吸を」

「う、うん。(スーハースーハー)さ…、さっき 厨房へ行ったらね、あ…、あのねっ」
コハクは深呼吸し、改めて 恐ろしい事態を告白した。

「ダ、ダリウスさんがっ! 厨房で 何か 作ってたー!!」
「な、何ですって!?!?」

コハクが 発見した時には すでに手遅れ。
慌てて 邸中を探し回り ルードに報告したのだった…

               ★
               ☆

そんなワケで 調味料のストックが 切れてしまったのだ。

「醤油と砂糖を 煮詰めれば カラメルが 出来ると思ったんだよ♪」

いやいや。
醤油は 確か 要りませんよ?

「ダリウス様…醤油を いかほど お使いに なられたのですか…?」
半分くらい残っていた 醤油の瓶が ちゃぽちゃぽと 頼りない。

「うーん。入れても 入れても 無くなっていくんだ」

グラグラと熱された鍋は 水分をあっという間に 蒸発させてしまうくらいの熱量に。
醤油を トポトポ 入れても、ジュワジュワと泡立ち、掻き消える…
後半は それの 繰り返しだったという…

「カラメルを作って…いったい 何を作ろうと…?」
「ふふふ^^」

料理が 成功しようと、失敗しようと、ダリウスは気にしない。
作る過程が楽しいのだった♪

               ☆

コハクとルードは醤油と、他にも無くなりそうな調味料を買い、さあ帰ろう。

「お腹 空いたー! 何か食べていきたいなー!!」
「子どもですか! まったく…仕方ないですね」

と、駄々を捏ねたし、何だかんだ コハクには 甘いルードなので 飲食街へやって来た。

「わ〜い♪ 何 食べようかな〜」
「あまり食べ過ぎないように。夕食が入りませんよ」

「だ〜いじょうぶだよぉ! ルードくんのご飯美味しいからいくらでも食べられるもーん」
「…♪ そういう意味ではなくて、食べ過ぎは 身体に 良くありませんよ」

料理を褒められると 嬉しさを隠し切れないようだ。

「んお?」
「あれは」

「千代〜。千〜代〜」
「何度言っても ダメなものは ダメですっ」

冒頭の、千代と九段が揉めている 現場に到着したのだった。

               ☆

「貴方達、何をしているのですか」
「あやや〜。ケンカは良くないよ」

声を掛けられ、千代のお説教も一瞬止まる。

「おおー>< コハクっ!!」

その隙を見過ごさず 九段が ひしっと コハクに くっ付いた。
きっと、コハクならば自分の望みを叶えてくれるだろう…と。
星の一族の 直感だった。

「ふわわ〜。九段さん、どうしたの〜?」

思った通り、ヨシヨシと 宥めてくれる♪

「千代が…、千代が イジワルを 言うのだ〜TT」
「もう! 九段ったら。私が 悪者みたいじゃない」

当然、千代は プンスカ怒る。

「(コホン)…往来で 騒ぐものでは ありません。皆の迷惑になります」
とりあえず、場所を変えませんかと 大人な対応。

「は〜〜〜い」×3
最年少・ルードハーネの ひと言で 四人は 人通りの少ない場所へと 移動した。

               ☆

改めて事情を聞くと・・・

「発端は今朝と…お昼ご飯の時だった… …」

            § §
            § §

今朝のメニュウは…ご飯と味噌汁、焼きジャケ。
これといって ヘンテツもない 朝食だった。
京育ちの 九段や千代に 和風の朝食は 食べ慣れた 定番メニュウだった。

「やはり朝は味噌汁に限る…♪」
ススっと 味噌汁を 味わう九段。

「…むう?」
ただひとつ…、不満があるとすれば…

「九段ったら! ニンジンも 食べなきゃ」

今日の味噌汁の具。
九段の 嫌いな食べ物である ニンジンが 入っていたのだ。

「九段でも 食べやすいように お味噌汁に入れて もらったのよ」
「むむ。千代の差し金であったか」

「人聞きの悪い風に言わないで。九段の 好き嫌いを 無くしてあげようと しているの」
「… … …もうお腹いっぱいなのだ〜」

幼い頃から 嫌いな物は嫌い。
上手に ニンジンだけを残して。
九段は ぴゅ〜っと 食堂から去っていったのだ。

               ☆

残したニンジン、少し腹ペコの お昼のメニュウは…

「むむむ!!」

オムライスをひと口。
すぐに気付いた。

「この赤み…ケチャップライスだけではないな…」
「そうね。ニンジンの甘みも加わって美味しいわ」

「むむむー! 梓〜。千代が 我の嫌いな物ばかり 食させようとするのだ〜」

ヒシっと、梓に泣き付いた。

「え…、えーと…」

梓は梓で困った立場。
先日 千代から 九段の好き嫌いについて 相談を受けたのだ。


――「細かく刻んで 好きな食べ物に 雑ぜてみたらどうかな?」――


…と、一連のメニュウのヒントは 梓が授けたものなのだ…

「梓に甘えないの。ご飯を食べないと 夜まで持たないわよ」
「… …しかし… …やはり食えないのだー!」

オムライスをひと口食べただけ。
九段は ぴゅ〜っと 食堂を飛び出していったのだ。

            
            

朝も昼も お腹いっぱい 食べなかった 九段は腹ペコになった。
お財布を持って 飲食街へ赴き…

「空腹は甘味で満たすのだ〜^^」

おせんべいに キャラメルに、お団子、お饅頭。
デザートは アイスクリンにしよう。
甘味フルコースを思い浮かべ、意気揚々と街中を進む。


「! むむむ♪♪♪」

ミルクホゥルの 看板を見た 九段は 瞳を輝かせた。

「新作のケェキ♪ こ、これは食さねばならぬ!!」


ケーキワンホールなら おせんべいも キャラメルも お団子も お饅頭も。
これらと 同じくらいの 満足度が味わえる♪
さっそく 店に入ろうとしたのだが…



「―― 九段っ! 見つけたわよ」

腹ペコの九段が行く先など、千代には お見通しだったのだ。

               ☆

「・・・・・なるほど」

事情を知ったルードは コホンと ひと息。
そうして、キビっと 厳しい眼つきで 九段を見上げた。

「駒野千代が正しいです。好き嫌いなど、貴方は 子どもですか!」

…ルード自身も牛乳が苦手だが…
今は気付かれないようにしよう…

「九段、お昼ご飯 お弁当にしてきたわ。お腹 空いているなら お弁当を食べましょう」

ルードハーネという味方も得た千代。
すかさず ニンジンたっぷり オムライス弁当を取り出した。

「はうう〜TT ふたり掛かりとは卑怯な〜」

我の、我の味方は 居らぬのか。
キョロキョロ〜と、コハクの姿を探す。


・・・・・・いなーい><


「―― うっひゃあぁぁぁ♪ コレが新作ケェキかぁ〜」


…かと思えば、ミルクホゥルの看板を見ていた。


チャンス到来!


「そ、そうなのだ。コハクは 新作ケェキに 興味があるのか?」

甘味の事となると 素早い九段。
ぴったりとコハクに付け、彼を通して千代もルードも 取り込もうという 算段なのだ♪


「美味しそ〜(グウ〜)」
にこー^^


「うっ!?」
この笑顔でお願いされると…


「食べたいな〜(グキュ〜)」
「…仕方…ないわねぇ」

毒気を抜かれ、つい聞いてしまう ルードと千代だった。


「(やったのだ〜^^)では我は 先に行って 席を確保してくるのだ〜」

ぴゅぴゅ〜っと。
本当に、甘味の事となると 素早いのだ…


「・・・・・やっぱり 九段のニンジン嫌いは 克服 出来ないのかしら…」

(好き嫌いは 克服しようとしても 上手くいかないものです)


ルード自身、何度か 牛乳を克服しようと努力した。

…が、簡単には いかないもの。

調理すれば 乳製品は 何とか食べられるが、牛乳単品は やはり手強いのだ。



「あのねぇ 千代さん、コショ コショ コショ…」

九段が店に入るのを見届けて、千代に こっそり ナイショのお話… … …

               ☆

「こっちなのだ〜」
席に着き、メニュウも 頼み終えた九段が 3人に手招き。

「ち…、千代。今日だけなのだ。今日だけ ケェキを お昼ご飯とさせてくれ」

年下だが、千代に 頭の上がらない九段。
怒られると…、拒絶されると…、怖いのだ。

「…今日だけ、ね。いいわ。その代わり 残したら 本当に怒るわよ」
「♪♪もちろんなのだ♪♪ 我が ケェキを残すなど、断じて有り得ぬ」

先に店に入ったが。
残ったコハクが 千代とルードの毒気を すっぽり抜いてくれたのだと 感謝した。

「楽しみだね〜。あ、九段さん、きたみたいだよ」
「おお〜〜〜^^」


ミルクホゥルの新作メニュウ。

オレンジ色で、

甘い、あま〜い… … …


「お∵?」


甘〜い野菜 たっぷりの、ヘルシーで健康的な ニンジンのケェキだったー!!

「…ケェキは残さないって…約束したわね、九段♪」
「ニンジンの他に カボチャも入っていますね。私も今度 作ってみましょう」
「うんうん〜♪ ダリウスさんも 政虎さんも 喜ぶよ〜^^」

――…果たして、九段は新作ケェキを食べられたのか…否か…――




∽∽∽あとがき∽∽∽

仲良し四人組の 今回の集まりは”10代組”でした。
梓は 村雨さんの代筆を している設定で(^^♪

このお話「明日は誰の家で」の 数日後 だったりします。


朱雀・玄武編で 女の子同士、梓とふたりで 楽しく過ごした千代。
話の流れで 九段の好き嫌いに ついて 梓に相談したらしい(そして本編のくだりへ)


一方青龍・白虎編で 有馬への仲直りのコロッケ? が 奇跡的に成功し、妙な自信をつけたダリウス様。
一回 料理をしたら しばらくは おとなしいダリウス様だけど、早いスパンで クッキングしてしまいました^^


タイトルの「蠱(ん)惑的な新メニュウ」は

蠱惑→人の心をひいて まどわす
困惑→判断がつかず 迷う

を 合わせて、蠱惑のあいだに”ん”を 入れてみました。


お題の「共通的な」
共通→ふたつ(それ以上も)どれにもある、当てはまる

コハクとルード、九段と千代。
年少者は しっかり者の 意味を込めて、です♪

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
お題:仲良し四人組「共通的な」


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