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いろいろお題
[遙か6]〜ルードの案内・蠱惑の森〜


憑闇に侵された少年 コハクを保護して数日。

「では虎。留守を頼んだよ」
「へいへい」

「一時間ほどで 帰ってきますが…部屋を散らかさないでくださいね」
「へえへえ」

怪我も完治してきたある日、ダリウスとルードは 術を施した森の歩き方を教える為、コハクを連れ出すのだった。


〜ルードの案内・蠱惑の森〜



「わ〜い♪ 気持ちいい〜〜♪♪」

記憶を無くし、植物園で梓達に 出会うまでは その日暮らしの毎日。
ご飯を食べれない日もあったし、お風呂など 夢のまた夢、だった。

保護される時に 出来た怪我のほかにも、小さい傷もちょこちょこ。
ほっぽっていたわりに よく化膿しなかったものだと、手当てをしながら ルードは感心していた。

「見て見て! ルードくん! 木々の間から お日様が キラキラしているよ!」
「風も 心地よく 吹いているし、日差しも 丁度いい。気温も暑過ぎず、寒過ぎず・・・ダリウス様?」

真面目に 本日の気候を 分析しているルードに、ダリウスはクスクスと 笑いを堪えていた。

「ルードの説明は お堅いからね。コハクが混乱しているよ」
「ななっ!?」

コハクは クルクルと目を回し、一所懸命 理解に勤めていた。

「んーと んーと。”いい天気”で、いいんだよね」
「ああ。そうだね」

ダリウスはニコヤカに コハクの混乱を取り除いてあげた。

「そ、それより…この道を 真っ直ぐ行くと 左に見えていた 湖に出ます」

気を取り直して、地図を片手に 森を案内するルード。
術で空間が歪み、蜃気楼と似た 現象が起きているのだ。

”見えているもの”は”そこ”に 在らず。
順路を間違えると たちまち迷って 森から排除されるのだ。

「わあー!! 湖、キレ〜イ!!! ルードくん、見て見て!!」
「見てますよ…そんな事より、道は覚えているんですか?」

「んー…と、あっちの 木のてっぺんに 雲が かかっていたでしょ?」

キョロキョロ見渡し、指差した。

「・・・は?」
「でもでも、こっちの木には 青空だけ」

(…ふむ?)

コハクの とんちんかんな説明を 微笑ましく 聞いていたダリウスの 表情が変わった。

「雲は風に乗って動きます。不安定な物を標にするなど…」
「んーとんーと>< おれ、話すの苦手で…見てて!」

考えるより即行動!
コハクは 森の中へ 走っていった。

「あ! 道も覚えないで 迷子になりますよ!」
根は面倒見のいいルードは コハクのあとを 追いかけようとした。





「待って、ルード」





「ダリウス様? ですが 迷われると 面倒な事に…」

見つからない場合、術を解除してコハクを回収。
しっかり小言を言い放ち、また結界を 張り直さなければ いけないのだ。

「…しばらく 待ってみよう。あの子は…俺でも 気付けなかったものを 見ているのかも」

髪をいじり、ダリウスは微笑を浮かべた。

               ☆

しばらくすると、軽やかな足音が 森の方から近付いてきた。





「じゃーーーん!! これ、な〜〜〜んだ♪」





突き出した手には 如雨露が 握られていた。

「こ、これは!? ダリウス様の花壇は裏口の横…まだそちらの道は教えていないはず…」

道もうろ覚え。
だが迷わず 湖に辿り着いたコハクに、想定外な出来事に脆いルードはアタフタするばかり。

「ふむ…湖から邸の裏へ通じる道はあるが これほど短時間では…コハク、どういう事かな?」
「んっとね、なんか空の 雲の動き方が 結界があるところと 無いところで違ってたんだ」

「そ…空?」

「だから雲の動きに 合わせて進んだら、ダリウスさんの花壇に辿り着いて…そんで、なんとなく」
「なんとなく!?」

厳重に施した結界術が”なんとなく”で 解かれては 鬼の名折れだ。

「ふ…む。鬼の一族でも ないのに…なるほど。いい子を拾ったようだ」
「えへへー^^」

ヨシヨシと褒められ、満面な笑みを浮かべた。

(なんとなく…なんとなく…凹)
コハクの何気無い発言に 真面目なルードは いちいち凹んでしまうのだ。

               ☆

コハクが 森の歩き方を すんなり理解したので 早めに切り上げた。

「ふぅん。こう進めば 邸に近いんだね」
「うん! あ、だけど おれ このままじゃ 裏口にしか 辿り着けないな〜」

「はは。今度は 森の外から入る 練習をしようか」
「うん!! ダリウスさん、お仕事も忙しいのに おれに 付き合ってくれて ありがとう!」

「ふふ。素直な子は好きだよ。町で 珍しいお菓子があったら 買ってきてあげよう」
「わ〜〜〜い^^ おれ、この邸に 住まわせて もらえて、ホント良かった〜♪」

すっかり ダリウスに 懐いていた。

「さて、時間も早いし。俺は少し 花壇の様子を 見ていこうかな」
「ではダリウス様が 戻られるまで 待っております。ごゆっくり どうぞ」

「すぐに 終わるさ。今朝 蕾が綻んでいた一輪が どうしても気になってね。コハク、如雨露を貸して」
「はーい」

丹精込めて 育てている ダリア。
日々の成長を 楽しみに しているのだ。

「いってらっしゃ〜い ダリウスさ〜ん」
ぶんぶんと 手を振って ご主人様をお見送り。

「あれれ? ルードくん、何 書いてるの?」
「ダリウス様が 戻られるまでに 今通ってきた道を 地図に書き足しているんです」
「ふ〜ん。おれはノド 乾いちゃったなぁ〜。台所で水 飲んでこよーっと!」

森で はしゃぎ過ぎた コハクは 裏口から 台所へ入ろうと、ノブを回した。





       ――…ガチャ…――





「!!!!!?」

扉を開けた瞬間、コハクはフリーズした。







「(シャリシャリ)あ〜あ…私も共犯かぁ〜」







生のダイコンを齧っている梓がいたのだー!?

ダイコンは包丁で切られた形跡は無く、力任せに折られたようだった。

…当の梓はダイコンに夢中で コハクに気が付いていない様子。

(あわわ…>< 見間違いかも しれないから…)





       ――…パタン…――





とりあえず、梓に気付かれないよう ドアを閉めた。

「コハク? 水を飲むんじゃ…」

地図に 新たなルートを 書き込んでいたルードは、ドアを開け閉めしただけの コハクに尋ねた。

「えっとぉ、えっとね。先客がいた…って ゆーか、お取り込み中…みたいな♪」
「…支離滅裂ですね」

コハクは 誤魔化すのが苦手。
ルードに 思いっきり 怪しまれた。

「大方、虎が つまみ食いでも していたんでしょう?」

鬼の居ぬ間に なんとやら。
政虎が自分の留守中に これ幸いとばかりに 台所を漁っているのだと 思ったのだ。

「(ギクっ!)えぇーと、えーと。つまみ食い、してたけど…あわわ!!」

嘘が吐けない 素直なコハク。
思ったままを、知っている情報を 言葉に出してしまうのだ。

「いい機会です。虎に キチっと 注意しましょう」

そうでなくても 最近 使おうと思っていた食材が あるべき場所に無かったりして、政虎を疑っていた。

だが 証拠が無い。

なので、つまみ食いしている 現場を押さえれば 政虎も文句は言えないだろう。

「あー、あー。ルードくん、見ない方が…」
梓の名誉の為、神子としての理想が崩れない為に コハクは頑張ったが…





       ――…ガチャ…――





「!?????」







…扉は開かれてしまった…







(なっ…なっ…なっ…)
(ダイコン…葉っぱだけになってる…ひもじかったんだね><)





       ――…パタン…――





梓は やっぱり 気付いていない様子(笑)
そーっと、そーっと ドアを閉めた。

               ☆

見てはいけないものを 見てしまったふたり。

(…いつもいつも”足りない”と 文句の多い虎ですが…本当に量が少なかったんでしょうか…?)

身体が大きく、大食漢な政虎の戯言だと、聞き流していたのだが…

(…コハクも おかわり ばかりするし…やはり 足りないからですか…!?)

あんな場面を見てしまっては、食事の量を 改めて 考えてみる必要がありそうだ。

「ねえねえ ルードくん」
「は…な、なんですか?」

グルグルと 思考を廻らせていたルードを 現実に戻した。

「ダリウスさん、花壇の様子 見たら こっちに来ちゃうよ。ダイコン食べてる 梓さん、見つかっちゃうよ」
「は! それはいけない…ダリウス様が抱く 梓さんのイメージが崩れ去ってしまう」

「そうだよ。梓さんは みんなの女神様なんだから。今は女神様、お休み中なんだよ、きっと」
「そうですね。いいですか、コハク」

「うん?」

「この事は私と貴方の秘密です。決して、他言しては なりませんよ」
「うん! おれ、ぜったい 誰にも言わないよ!」

「まずはダリウス様と合流します。そのまま、玄関へ向かいましょう」
「分かった!」

――…少年達は結束を強め、ダリウスを迎えに行くのだった…――




∽∽∽あとがき∽∽∽

政虎さんのイベント「空腹」内で”コハクに森を案内するんだと。ダリウスもいっしょに”みたいな説明が!!

邸の外で 何やら 面白そうな出来事が 起こっているー♪
と、ノリノリで 書いてしまいました^^

なかなか 付けられなかった タイトルだけど、かなり シンプルなものに。
分かり易くて いいかも。

書いた当初は お題に 合わないか 試したけれど、一旦は止めて…
ダリウス様が抱く 梓さんのイメージを 壊さないよう”協力”するって コトで、上手い事 ハマりました〜♪

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
お題:友情「協力」

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あきゅろす。
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