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ミラクル☆4
僕等はそれでも世界を巡る。






久々に過ごす自分の部屋は、出る前と変わらない。落ち着ける空間。
けど…少し埃がたまってる…かな。


世界を巡るオレたちは、世間ではミラクル☆4という通り名でアイドルやってる。全員出身地は違う、風貌も違う…だからといって理解の差などは、さほどないのだ。だって皆生まれは日本だし。


開け放たれている窓から入り込んだ風は心地良く、カーテンを揺らすそれはまるで生き物のようで。
手を伸ばす。
掴めたことはないけど。



ああ、帰ってきたんだな。







自室でくつろいでいた。だけどそれは今自分が求めている安らぎとは少し違うものだと分かって、ブランケットを片手に部屋を出る。

少し広いこの"家"は…まぁ歩いていれば大抵自分の求める安らぎにありつける。
時には他人の部屋なり、書庫なり…。


自分の部屋はこの家のちょうど中間あたりに位置している。そこから、安らぎを求めて彷徨う。

ぺた、ぺたと足音をたてつつ進む。裸足だけど、それでもまだ暑い。…窓を開けよう。廊下を進みつつ、手当たり次第に入った部屋の窓を片っ端から開けていく。

落ち着ける部屋は、まだない。

順番に進んでいく。途中入った部屋では、フォースが宙に手を掲げていた。
触れないように過ぎ去る。彼は何をしていたのだろう…疑問は形を成す前に消えたが。


ツーストの部屋は鍵がかかっていた。まあ物音がしないので大方寝ているのだろう。
帰ってきて真っ先に部屋に向かったから。相当疲れていたらしい…そうはいっても自分も人のことは言えないが。


主が不在の部屋。窓を開けて、……今ごろ何をしてるんだろう。帰ってきて、…昼過ぎから見てない。いや、正しくは…帰ってきたのが朝で、昼過ぎまでは皆寝てたはず。

居ないだけで、不安になる。不安とは精神の不安定状態からくるものだ。…自分が安らぎを求めていたのは このせいか…

ベッドに横たわる。持ってきたブランケットを軽く掛けて、いざ眠りの世界へ。

…そうはいっても中々眠れない。否、自分は眠りを求めているのだろうか。考えることも面倒に感じたのでこの部屋の主を待つことにした。
待つ途中で寝てしまったら…その時は、その時だ。





世界を巡ってきた俺は、今自室のベッドに突っ伏している。世界…というよかはポップンワールド―MZDの創った世界たち―を巡ってきたのだ。

一つや二つの世界じゃない、宇宙に存在する数多の星々…はたまた別の時代…世界中にファンがいる、というのは大変嬉しいし、有難い。

だがその数多くのファンが点在する数々の世界を巡るのもまた疲れることだ。職業上、そんなことは承知の上でだが、やはりあのスケジュールはキツかった。

三年間だ。三年間で全世界…こんな偉業をやってのけたのは俺達が初めてだが。


窓だけが外の世界と繋がっている。ドアは鍵をかけた。五月蠅い奴(あの"なんちゃってウエスタン"な、)が入ってきて安眠を邪魔されようものなら俺は多分事件を起こしてしまうだろう。なのでロック。

眠いときと寝起きの俺は相当機嫌が悪いらしいからな。

寝返りをうって天井をみつめる。
ああ、この景色も懐かしい。

瞳を閉じれば音が感覚を支配する。

風に乗って流れ込む外の雑音がBGMのようだ。

廊下の方で足音がしたような気がした。よし、もう一眠りしよう。




晩ご飯、どうしよう…と、ふと思ったのだ。それで帰って早々出かけることにした。まぁ少し休んだが。
帰り道、幸い友人に会うこともなかった。足取りは自然と速くなる。早く帰って休息を取りたいのだ、多分。
自分だって、世界を巡ってきたのだ。疲れないはずがない。

それでも元気そうに振る舞うのは大変な重労働。
だがその振る舞いもすぐメンバーに悟られてしまう。まだまだだな…


懐かしい帰路、自分らの"家"があるマンションが見えた。

少し走って、エントランスへ。
エレベーターの「▲」を押す。


ミラクル☆4はその名の通り4人からなるグループだ。
最初にこのマンションに住んでいたのは自分とツーストだった。同じ階。2つ右の家がツーストの家だった。
ある日仕事の話が回ってきて、初めて話した。自分は3人のメンバーとグループを組むらしい。
同じ階のご近所さん、というだけあって、馴染むのは早かった。

そしてその一週間後には残りの2人がこのマンションにやってくる。

初めて話した"残りの2人"はとても社交的な人たちだった。
片方は貴族、もう片方も米国育ちというだけあって、話しやすかった。

最初のうちは全員バラバラの部屋に住んでいた。
しかしある日、MZDの計らいで、ミラクル☆4がマンションのこの階を使うことになった。
ちなみにMZDはこの階全体を一つの"家"にしてくれたのだ。要するに隔てる壁を取っ払った感じ。
だから、異様に広い"家"になっている。



エレベーターを降りれば、すぐ"家"。鍵を開けて、そっと中に入る。きっとまだ寝てるのだろう…静かな廊下がそれを物語っていた。

買ってきたものを冷蔵庫に仕舞う。
夕飯といっても、茹でてトマトソースを絡めるだけのパスタだ。
故に食材もそんなに多くはない。



行ってきたのは近場だったのだが…ツアーの疲れがまだ残っているのか、だるい。
まだ時間もたくさんあるし、寝よう…

自室へ向かう。



ドアを開けると、先客が居た。
ベッドで、自分の枕を抱いて、寝ている少年。
きっと、待っていてくれたのだろう。自然と笑みがこぼれた。


だが、少し暑そうだ。抱いていた枕をそっと引き抜いて、足元に転がす。


額にかかった髪を、そっと寄せてやる。年相応の寝顔は幸せそうで、多分夢の真っ只中なのだろう。


すると、手を握られた。
…無理に放すこともないか。

そのまま、ベッドの端で自分も寝ることにした。














ぎし、とベッドが揺れた気がした。





遠くに行っていた感覚が、揺れを感じて、それを伝える。

そっと閉じていた瞼を開くと、帰りを待っていた彼が近くにいた。しかも、いつの間にかその手は繋がれていて、
思わず声が出そうになってしまって、急いで空いている手で口を押さえる。危ない危ない。起きてしまうかもしれない。


それにしても、いつ帰ってきたのだろう。彼の肩越しに見える壁に掛かっている洒落た時計は長針と短針が真反対。6時を指していた。
彼を待ち始めてちょうど1時間程だろうか?




とりあえず、この状況はどうかと思う。
何より、近い。外国育ちでない自分は、挨拶代わりにキスやらハグやらをする習慣に慣れていない。要するに…こう人肌が密着するようなことに免疫がないのだ。
(と、いうか平安にそんな習慣は無かった…)


…故に、こういったことをされると、その、全身が火照るように熱くなってしまう…



「…ん…」
身じろぎをする彼の腕が、何かを探すように動いた。

ビクッと体が揺れるのが分かった。つい目を瞑ってしまう。
すると彼の腕が背中に回されたのが分かった。そのまま抱き寄せられる。近い近い近い…!!


安定した呼吸が、彼が寝てることを伝える。
ね、寝るのはいい、けど、抱き枕にしないで欲しかった。




とりあえず彼が起きたらさり気なく問うてみようと思う。
でもそれまでに、この火照った体をどうにかしなければ。免疫が無いって、つらい。






寝てる彼の顔をそっと盗み見ると、あまりにも綺麗で、
自分だけが慌てふためいているみたいで、



ちょっとだけ悔しくなったから、

彼のシャツの裾を掴んでやった。




こうしたら、少しは起きたときに驚いてくれるだろうか?


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