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オフィーリアとリアリィ
少女の閉じこめられた時間の一部






初心はいつまでも其処に置いておこう
彼女にとっては2番目のお友達、
けれど私にとっては最初のお友達





彼女は生まれたときから「其処」に居たのだ
大きな時計…砂時計…たくさんの扉…色の散りばめられた空…そしてどこからか降ってくる「時間」
「空」を見上げると歪曲している。きっと自分の居る此処、もとても大きな砂時計の中なのだろうか…


最初は戸惑っていた彼女も、いつからかその空間に慣れを感じ、過ごしていた

ある日彼女はその空間に位置する扉に手をかけた
扉なんてどうやって開けるのだろう。誰にも教わったことのない彼女は開けることに苦労した。なにしろ彼女はこの空間で独りなのだ。自分以外の存在なんて知らないのだ。

手元に置いておいた砂時計の砂がもうすぐ無くなろうとしたとき彼女は扉を開けることに成功した
そこは真っ暗な空間。そしてそこからは気流の流れが感じられた。
少女に恐れはなかった。この空間に怖いものなんて無かったのだから…この扉の奥もそうに決まっている。
そして彼女は扉をくぐった…




少女の目に飛び込んできた風景は、一面の花畑だった。
だがその空間の上空は歪み、粒子が蔓延っていて、いかにも妖しく幻想的な空間であった。

そして頭の中にたくさんの情報が流れ込んできたのだ…
激痛が走り抜ける。

「…ぁっ…痛い…っ…!!」


痛い いたい イタイ


少女は自分が何をしたのか分からなかった。
自分の思ったことが、音として外に流れ出したことを。
少女は独りだった。だから言葉を口にしたことはない。思ったことは思っただけで終わるのだ。


…私は今…何を…







「…ねぇ どうしたの?
どこか痛いの? リアリィに何かできることはある?」
少女が立っていた。自分よりも、ずっと幼そうである。

「…?」
彼女には自分の目の前に確かに存在するものが分からなかった。
自分の他に、時間に身を置くものが存在する…すなわち生きている存在が…居ることを知った

「ああ、ごめんね あたしはリアリィだよ
リアリィはね ずっとここにいるの…」

…寂しくないのかな…

「寂しくなんかないよ リアリィにはお馬さんがいるもん」
自分の思考を読み取ったその少女は微笑みを浮かべていた


「…わたしは、オフィーリア…」
…それ以外に何を言ったらいいのか…分からない…


「うん オフィーリアだね!
よろしく リアリィの2番目のお友達!」

お友達、って何なの?





リアリィと名乗った少女はオフィーリアに色々なことを教えてくれた
この世界はヴァーチャル・ワールド
電子と粒子の狭間。いつ消えるかも分からない幻影世界


彼女も生まれた時から此処にいるらしい。
今日は居ないらしいが、お友達の「お馬さん」もいるそうだ


「リアリィ…この世界は楽しいところなのね」



オフィーリアの笑顔の奥には憂いが見えた



すると…リアリィはオフィーリアの額と自分の額をくっつけた

「瞳を閉じて、オフィーリア…」




初めて触れた自分以外の「生きる者」の肌は温かかった




温かみが、離れる




「…オフィーリアは 寂しかったんだね
誰も 誰もいない 世界にたった独り…
リアリィもね お馬さんに会うまでは ずっと


ずっと独りだったの」


少女は泣いていた。

リアリィも独りだった。
自分と対話して、自分しか居なかった世界で、心が泣いていたんだ


私は自分以外の存在を知らなかったから寂しくはなかった…けれど、
リアリィのいるこの世界はヴァーチャルワールド。いわば幻影の、不可能も可能になる空間
彼女が望めば知ることはいくらでも出来るのだ



…泣かないで

「オフィーリア… リアリィはどうしよう
ねぇ オフィーリア どうしたら


どうしたら 泣きやんでくれる?」

「え…?」
彼女は自分の頬に手を伸ばす

自分の身を纏うものが、湿った
何かが頬を流れ落ちた


…涙だった



「…私、泣いている、の…?」

「うん オフィーリア 泣いているわ
悲しいの? 苦しいの?」





「寂しいの?」






その言葉が引き金となったように、彼女の瞳からは涙があふれ出す
言葉で表すことも出来ない、寂しさのような、心を締め付ける感情

「リアリィ リアリィ、 私は寂しい」
どうして此処に来てしまったのだろう
孤独を知らずに済んだのに


けれど…




「オフィーリア 笑って
リアリィは オフィーリアの笑った顔が見たいな」



…涙を拭い、笑う

「リアリィの言葉は魔法みたい」










それから長い間、オフィーリアはリアリィと遊んでいた
花を摘んだり、リアリィがタンバリンで音を奏でてくれたり


何もかもが初めてのオフィーリアには魅力的なものばかりだった













突然だった




カチ カチ カチ カチ…



オフィーリアの中の 時計が音を立てる


扉をくぐる前に持った懐中時計
来たときは動いていなかったのに


時計の 針の進む音

秒針の 進む音


…動き始めた




そっと銀の懐中時計を見る


隣にいたリアリィがのぞき込んできた


「オフィーリア それ なぁに?
キラキラしてる これは流れを計るのね」

白い指が縁をなぞる


カチ カチ カチ カチ


規則的な音




短針は12のそばを
長針は58を
指していた




リアリィが一瞬曇った顔をした

カチ カチ カチ カチ



少女は顔を上げた
何かを決意したような瞳に打ち抜かれるよう



「ねぇオフィーリア あのね
リアリィはね オフィーリアに会えてね
すごい嬉しかったよ 


来てくれて ありがとう」


長針が59を指す


「え…リアリィ…?
突然…何?


私もリアリィに会えて嬉しかった…よ?」




目の前の少女は頬を赤らめて笑った


彼女の言ったことはよく分からなかったが…お友達、の意味が分かった気がする



悲しみも 喜びも共有できる
そんな存在…



カチ カチ カチ カチ


オフィーリアは扉をくぐって良かったと思っていた
自分と対話してくれる人がいる
分かってくれる人がいる


これがきっと「幸せ」なのだろう

此処に来た時に流れ込んできた情報を拾い上げるように。
此処では感情を表すことが出来るようだ




ああ、幸せ





けど、幸せは続かないのだ


「オフィーリア また会えたらいいな」


少女の頬を涙が伝った




カチ


長針が短針と重なった




その時だった
オフィーリアは周りの変化に気付いた
空間がねじ曲がっていく

そして
自分の体が消えてゆく

時間があふれ出す



「リアリィっ…リアリィ…!!!」




視界がブラックアウトする



意識を戻した時、彼女はまた砂時計の中にいた



帰ってきたのだ





「…………」

言葉が、出なかった

まるで感情を忘れてしまったかのように




彼女がくぐった扉は、まだ其処にある
でも、開けられないのだ

いくらドアノブをひねっても



まるで運命がそう囁くかのように


『まだ再び開く時ではない』とでも言うように



「………………」
…リアリィ…





彼女の頬を伝ったのも、あの時少女が流したものと同じ。
涙だった






言いようもない寂しさに埋もれるようだった



ああ、彼女はきっと孤独を嘆くのだろう







その頃、彼女の居た空間の扉が1つ、増えた



彼女はその異変に気付く




時の流れを生き抜く少女は孤独を知ってしまう


だがその流れが一つでないことも知る



そして彼女はまた扉を開くのだろう



新たな友達に会えることを願って


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